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【ウィーン=石黒穣】スイスのチューリヒ州当局は31日、指定暴力団山口組旧五菱会系ヤミ金融グループ最高責任者、梶山進被告(54)がスイスの銀行口座に預けていた資金6100万スイスフラン(約52億円)について、没収手続きに入ったことを明らかにした。
日本とスイスの間では、差し押さえの対象となった不正資金について、分配や返還を定めた法的枠組みがなく、日本への資金還元の道が絶たれる公算が大きくなっている。
チューリヒ州当局は、梶山被告名義口座1つについて、2003年12月、マネー・ロンダリング(資金洗浄)の疑いがあるとして凍結。その後、没収方針を決め、2004年6月に官報で公告していた。8月26日の異議提示期限が来ても、日本側からの申し立てはなく、州が没収する手続きに入った。没収されれば、連邦政府との間で折半され、それぞれの予算に組み入れられることになる。
関係者によると、チューリヒ州当局は、凍結された預金が不当な高金利によって集められた収益金である実態を踏まえ、日本の法務省に対し、返還請求を行うよう非公式に打診していた。犯罪絡みの差し押さえ資金について、米国とスイスでは協定に基づいて、半分を送金元の国に返還することになっているが、日本とスイスではそのような協定はない。
州当局の担当者は、没収は最終決定ではないとし、「被害者救済を優先し、日本側と臨時の覚書を結ぶなどして、返還する方策を探りたい」としている。
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旧五菱会系ヤミ金融グループがスイスの銀行に違法収益を隠していたことに関し、法務省は、スイス政府が没収した場合に日本側と分配できるよう、協定作りに向けてスイス側と協議を始めた。
日本の組織犯罪処罰法には国内にある犯罪収益の没収規定しかなく、協定が締結されれば没収資産の一部返還を求められるが、国内法の整備などが必要で難航も予想される。資金洗浄のため海外に送金された犯罪収益が没収されれば、同法が2000年に施行されて初のケースとなる。
法務省は、スイス検察当局が、クレディ・スイス(CS)本店にあった梶山被告名義の口座を凍結した後、スイス側と協議し、日本への資産返還方法を検討してきた。同省によると、没収財産の配分協定を締結するには、スイス側からの同様の要求に応じられることが前提だが、日本にはこうした手続きを定めた法律がないため、法改正や新たな立法が必要になるという。
「全国ヤミ金融対策会議」代表幹事の宇都宮健児弁護士は、「犯罪収益が没収され、ヤミ金に戻らないことが確実になったのは喜ばしいが、被害回復という面では法に不備があり、法改正すべきだ」と話している。