2004年08月26日(木) 00時00分
警察の対応に賛否 危機管理問題(朝日新聞・)
過去に殺人などの罪で服役し、精神病院に入院中だった男性が行方不明になったとの警察情報を受け、盛岡市内の児童・生徒が集団下校などした騒動は、地域社会の危機管理のあり方に波紋を及ぼした。学校に注意を促した県警や、市教委は「子どもたちの安全が最優先だ」と、適切な対応だったとしている。しかし、識者からは「刑を終えた人の社会復帰の機会を奪う可能性がある」との批判の声も出ている。
盛岡東署に、精神病院から「家族と外出中の男性患者が行方不明になった。捜してほしい」と連絡があったのは、24日午後1時過ぎ。同署で、男性の過去を確認したところ、約20年前に市内であった男児誘拐殺人事件で共犯として逮捕され、実刑判決を受けて服役した過去があったことがわかった。
同署は「付近の児童・生徒に、身の危険が降りかかる可能性もある」と判断。市教委に男性の名前は伏せたうえで、「凶悪事件を起こした精神病患者が市内で行方不明になった」と連絡した。過去の事件の内容にも触れたうえで、犯罪歴の詳しい中身は公表しないよう要請したという。
これを受けて市教委は、市内の小中学校に注意するよう呼びかけた。市教委から連絡を受けた県教委も、盛岡市周辺の10町村の教育委員会に連絡した。
男性が行方不明になった場所に近い、盛岡市大通3丁目の市立桜城小学校では、午後の授業を途中で打ち切り、集団下校させた。児童には「20年ほど前に大きな事件を起こした、入院中の男性が行方不明になっている。危険性があるかないかわからないが、心配なので集団下校にします」と説明したという。放課後の部活動を切り上げて生徒を帰宅させ、教諭を通学路に巡回させた中学校もあった。
住民にも動揺が広がり、同署には「男性は見つかったのか」といった問い合わせが、相次いだという。
同署の佐々木芳春副署長は「過去に子どもがらみの凶悪事件を起こしていることに加え、現在は精神病院に入院している二つの要素が重なり、公表を決めた。名前は出さないなど、人権には配慮した」と話している。
しかし、誘拐殺人事件の発生当時は、男性に精神障害はなかったという。また、男性が入院していた病院は、内規に基づき、男性に家族が必ず付き添うことを前提に、外出許可を出していた。
人権問題に詳しい、東京弁護士会の前田裕司弁護士は「過去の犯歴は最も重い個人情報。警察の対応は精神障害者に対する差別も助長しかねない。前歴や精神障害をもつ人が行方がわからなくなれば、何でも連絡することになりかねず、行き過ぎではないか」と話している。
(8/26)
http://mytown.asahi.com/iwate/news02.asp?kiji=6160
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