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■『低利』のワナ、被害相次ぐ
三重県南勢地方の自営業の女性(45)が「レディースキャッシングのエルセーヌ」というチラシを見て、「ウエストン」という東京都の登録業者のフリーダイヤルに電話したのは七月二十日ごろだった。女性は資金繰りに苦しんでいた。チラシは「幸せづくり応援」という甘い言葉で、年利1−9・2%の低利融資を強調していた。
百万円の融資を申し込むと、若い男が「借りた経験のない人は、まず他社で借りて」。紹介された二社から五十万円ずつ借り、男から指示されるまま、すぐに東京の「I・B・A」という会社あてに郵便局の電信為替で送った。男から「八月九日に融資する」と連絡があったが、その日にお金は振り込まれず、電話は通じなくなった。
同県北勢地方の会社員の女性(35)も七月二十三日、チラシを見て「ウエストン」に百三十万円の融資を申し込み、別の二社から借りた計百万円を「I・B・A」へ。同じく融資日の八月九日に振り込みはなかった。
二人とも、金を借りてすぐ送ることは、信用を得るための手続きのように思わされていた。しかし、実際に金を借りた二社ともウエストンと「関係ない」としており、二人には百万円の借金だけが残ってしまった。
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東京都貸金業対策課によると、ウエストンは二〇〇三年十一月に貸金業者として都知事登録した有限会社。代表は五十九歳の男性となっている。
同社の登録上の所在地になっている東京・大塚のマンションの一室を訪ねると、部屋の所有者だという女性(75)が一人で住んでいた。
女性によると、昨年五月ごろ、五十代くらいの男が来て、電話機を置かせてほしいと頼まれた。報酬は月三万円。掛かってきた電話は男の携帯電話に転送されるため「絶対に出ないで」と念を押され、郵便受けに「ウエストン」の表札が張られた。今年一月ごろ、男は「倒産する」と言って電話機を持ち去った。
会社登記簿に記された同社代表者の自宅は、神奈川県内の賃貸マンション。記者が訪ねた時、住人は不在だったが、部屋の借り主は代表者とは別名義だと分かった。
東京都への登録申請を代行した行政書士は、申請日より三年以上も前の一九九九年八月に、日本行政書士会連合会から行政書士の登録を抹消されており、事務所の電話も通じなかった。
一方、被害者が送金した「I・B・A」がある東京・池袋のマンションの一室を訪ねると、そこは事務代行業者の事務所だった。従業員によると「I・B・A」とは郵便物を預かる「私書箱」の契約をしており、七月末で契約は切れた。顧客に関する詳しい情報は話せないといい、連絡先や、送られてきた電信為替など郵便物の受け渡し方法は分からなかった。
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今回のチラシは新聞に折り込まれていた。仲介した三重県内の広告代理店によると、「エルセーヌ」の名称を使ったウエストンのチラシは、千葉市の貸金業専門の広告代理店からの依頼で、七月中、三重や愛知で計約十三万枚を折り込んだ。似たチラシをほかに三、四十万枚仲介したという。
千葉市内の代理店を取材すると、男性の社長が「(ウエストンとは)今春から取引が始まり、愛知、三重のほか九州でもチラシを出した。七月末で契約が切れた以降は連絡はない」と話した。
配られたチラシの数からすると、被害者はかなりの数に上る可能性もある。愛知での被害情報もある。東京都貸金業対策課は警視庁に通報し、ウエストンの調査を始めた。業者が所在不明であるため、貸金業の登録を取り消す方針だ。同課の相談窓口は電話=03(5320)4775。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040826/ftu_____kur_____000.shtml