2004年08月24日(火) 15時02分
<人身売買>被害者保護を重視へ 法務省(毎日新聞)
法務省が、海外から売春目的などで送り込まれた人身売買(トラフィッキング)被害の女性らに対し、不法残留が発覚しても在留特別許可を積極的に与えるなど、保護を前面に打ち出した運用を始めていることが分かった。これまでは身柄を確保しても、すぐ本国に強制送還するケースが多かったが、加害者を罰するための事実解明の妨げになるとの指摘を受け、方針転換した。人身取引への取り組みが鈍いと海外から批判される中、積極的な対応を打ち出した形だ。
現行法制では人身取引の十分な摘発ができないとして、法務省は来年の通常国会で、刑法に人身売買罪を新設するなど法改正にも乗り出す方針で、今回の対応は法改正の必要がない運用面で一足先に対策に乗り出したといえる。
法務省によると、「悪質な人身取引の被害者」で、加害者側の刑事裁判に証人として出廷する可能性がある人については、短期(最大90日)の在留特別許可を与えたり、仮放免の許可を与えたりする。また、刑事手続きに協力する予定がなくても、帰国すれば犯罪組織に狙われる可能性があったり、妊娠したりしているケースについても在留特別許可を与える。許可を与えた人については、各都道府県の婦人相談所や、NGO(非政府組織)の施設に入所できるようアフターケアも行い、その後の違法行為を防げるようにする。
今年2月に全国の入管で実施した強制送還対象者への聞き取り調査では、3517人のうち53人について、人身取引の被害者に該当する可能性が高いことが判明した。このうち、帰国を希望していない人を中心に約10人に対して、在留特別許可を与えた。7月にも1カ月間、同様の調査を実施しており、相当数に対して許可を与える予定にしている。那覇市のストリップ劇場で働かされていた未成年のコロンビア人女性については、人身取引被害と判断し、帰国前に在留特別許可を与え、不法残留者でなく、合法滞在者として帰国させたという。
この他、強制送還の対象者は自費で航空運賃を払って帰国するのが原則だが、人身取引被害者については国費で航空運賃を出すことも決めた。【伊藤正志】
(毎日新聞) - 8月24日15時2分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040824-00000068-mai-soci