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2004年08月18日(水) 00時00分

司法修習 廃止を視野に入れて 東京新聞

 司法改革の残された課題の一つが、修習生に対する給与の廃止である。弁護士の間には反対の声も多いが、法曹養成がロースクール教育に転換したのだから、修習廃止の議論に発展させるべきだ。

 司法試験に合格し、裁判官、検事や弁護士の卵として最高裁の司法研修所で勉強中の司法修習生は、特別職公務員として給与を支給されている。この給費制度が二〇〇五年度に廃止される見通しだ。政府は希望者に奨学金の形で貸しつける貸与制に切り替える方針である。

 将来、修習生が三千人に増える予定なので財政的負担が過大になる、特定職種の養成を有給で続けることに国民の理解が得られない、などが理由だが、日本弁護士連合会などは給費制継続を主張している。

 修習生はアルバイト禁止なので経済的に不遇の人は貸与を受けざるを得ないが、ロースクール(法科大学院)で学ぶため既に融資を受けている人もおり、負債が多額になる。

 そうなると、弁護士になってから金もうけに走り公共的な仕事をしないかもしれない。そもそも経済的に余裕のある人しか法律家になれない可能性がある。給費制は、法曹、とりわけ弁護士に公共的使命を自覚させる役割を歴史的に担ってきた。

 廃止反対の理由はさまざまだが、三千人時代を迎え廃止はやむを得ないのではないか。法曹の公共性は給費の見返りではなく、その職業が持つ本来の特質である。「給与をもらったから」では志が低すぎる。

 ただ、〇五年度廃止では、給費を前提に勉学生活の設計をして今春、法科大学院に入った人の期待を裏切ることになる。彼らが卒業する三年後まで廃止を延期すべきだ。

 裁判官、検事になった人の貸与金返還を免除する制度は設けるべきではない。任官者を優遇するのは、在野法曹に対する差別であり、忌むべき官尊民卑の思想といえる。

 さらに大事なのは司法修習廃止の検討を早急に始めることである。

 日本の法曹養成は、知識だけを試す一発型の司法試験が関門だったから、研修所で実務を覚えさせる修習が必要だった。

 だが、司法改革の一環として、ロースクールで理論と実務が融合した教育を行い、新たな司法試験でその成果を試す養成方式に転換した。このうえ研修所における官主導の修習制度を残すのは「屋上屋を架す」ようなものである。

 給費か貸与かは改革の本質的問題ではない。修習廃止へ向けてロースクール教育を充実させることこそが目指すべき方向だ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040818/col_____sha_____003.shtml