2004年08月13日(金) 00時00分
石通した水で温泉表示(朝日新聞・)
水道水やわき水でも、特殊な石で濾過(ろ・か)すると温泉になる? 温泉法では温泉は「地下からわき出した温水、鉱水」などと定めているが、水道水を濾過して「人工温泉」「準天然温泉」などと名乗っている宿泊施設もある。だが温泉法の対象外で、同法では規制できないのが現状だ。
妙義町などによると、妙義温泉では、3旅館が沸かした水道水やわき水を放射性元素ラジウムを含む石を砕いたものを通して、浴槽に注いでいる。そのうち2旅館は、同町役場のホームページ上(12日午前10時現在)からアクセスする各旅館のページで、「妙義温泉」「温泉保養プラン」などと紹介している。
3旅館は10年ほど前まで、鉱泉を沸かしていたが枯渇したという。水道水を「石」で濾過しても、温泉法上は温泉には該当しない。
10年以上前から水道水を使用しているという、ある旅館のおかみは「問い合わせがあれば『人工温泉』と説明しているので、うその表示ではない。表示に問題があれば今後検討する」という。別の旅館のおかみは「パンフレットは以前のものをそのまま使っていた。ホームページはすぐに削除したい」と話している。
同町は「各旅館からもらったパンフレットをそのまま載せた。表示については今後、検討したい」と説明している。
神流町では、町営宿泊施設の入浴施設内に「準天然温泉」と表示、ホームページでも効能と合わせて紹介している。
水道水を沸かした湯を濾過する装置に「トゴール石」という温泉のような成分を出すとされる石を入れているという。環境省は「温泉とは言えないが、表記に定めはない」という。同町は「客からのクレームはない。質問されれば、説明している」としている。
◇表示方法を県が検討へ
伊香保、水上、薮塚。「群馬の名湯」で水道水などを沸かしている施設があることが相次ぎ判明した。調査が進むが、実態把握はまだ一部に限られている。県のある幹部は「温泉法の盲点を突かれた」と話す。施設によっては数十年前から続いていたという水道水などの沸かし湯。県はなぜ、もっと早く対策を講じられなかったのか。
「苦肉の策だ」。11日に伊香保温泉の7軒を立ち入り検査した県の幹部は、苦渋の表情を浮かべた。温泉法により、県は温泉利用許可などの権限を持つ。だが、温泉法では、県は沸かし湯の施設に対して改善指示などができず、実態把握すら困難という。
そこで今回、県が立ち入り検査の根拠としたのが「不当景品類及び不当表示防止法」だ。沸かし湯なのにホームページなどで「温泉」と紹介していた場合、「不当な表示」として改善指導などをできる。
温泉法では、温泉であれば、成分などを見やすい場所に掲示する義務がある。だが、たとえ温泉地内であっても、沸かし湯を使う旅館やホテルが「水道水を沸かした」などと掲示することを定めてはいない。
県は「何も表示しないことが利用客の誤解を招くこともある」として、対策連絡会議で、表示のあり方も含めて検討していく考えだ。
《温泉の定義》
48年制定の温泉法によると、温泉とは地中からわき出る温水などで、25度以上ならば成分に関係なく温泉と認められる。25度未満でもラドンなど19種類の物質のうち1種類でも一定以上含んでいれば、温泉とされる。県によると今年3月末現在、県内の温泉地数は184、源泉数は438。
◇伊香保町調査 全施設終える
伊香保温泉の一部の施設が温泉と偽って水道水を使用していた問題で12日、伊香保町の対策本部は温泉内のすべての宿泊施設55軒と共同浴場2軒の調査を終えた。
このほか、パンフレットや雑誌などの広告、ホームページの内容など、全宿泊施設の広告表示についても調査を進めている。調査結果をまとめ、13日午後にも県に提出する予定。その後、町としても公表するという。
◇水道水温泉で水上町長謝罪
水上町内の一部の宿泊施設で、水道水などを沸かして「温泉」と表示していた問題で、水上町の腰越孝夫町長は12日の記者会見で謝罪した。
今後、信頼回復に向けて、9月中には各宿泊施設の源泉の有無を町観光協会のホームページで明示する。また、今年中にはパンフレットなどの印刷物でも源泉の有無を明らかにするという。
同協会によると、町内には計132軒の旅館、民宿、ペンションなどがある。同町などが12日までに旅館全40軒と、ホームページなどで温泉表示のある民宿など17軒を調べた結果、水道水や井戸水などを使用していた旅館やホテルは計8軒。うち4軒が「温泉旅館協同組合」に加盟していた。8軒のうち5軒は「温泉」などと誤解される表記をしており、2軒では入湯税も徴収していたという。
(8/13)
http://mytown.asahi.com/gunma/news02.asp?kiji=3802
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