2004年08月13日(金) 00時00分
「排水管点検」で高額商品売りつけ床下の点検と称して和室に開けた穴(朝日新聞・)
排水管の点検と称して高齢者の家を訪ね、床下に白アリが発生しているなどと不安をあおって、高額の床下換気扇などを売りつける「点検商法」の被害が、盛岡市全域で報告されている。盛岡市消費生活センターでは「排水管の点検に来たという言葉には必ず裏があるので、毅然(き・ぜん)とした態度で断ってほしい」と呼びかけている。
同センターによると、点検商法の相談は、今年に入って59件。7月だけで15件と急増し、84件あった昨年を上回るペースだという。被害に遭うのは、ほとんどが60歳以上のお年寄りが住む世帯で、被害額は1件あたり20万〜60万円にもなるという。
盛岡市中野の女性(70)宅に、作業服姿の若い男性が訪ねてきたのは今年6月の夕方のことだ。
「お宅の排水管が詰まっているようです。床下を点検させてもらえませんか」
女性の家は築30年。そろそろ悪いところも出てくると思っていた矢先だった。急な話に動転したが、若い男性の明るくハキハキした話しぶりを、女性は信用してしまった。
「点検してもらいたいけれど、床下に入れるところがない」と、女性が言うと、男は家にあがりこみ、手際よく和室の畳を上げると、用意していたのこぎりで床に約50センチ四方の穴をあけ始めた。女性は制止することもできなかった。
「嫌だったけれど、排水管が詰まっていたら大変だと思って……」
あけた穴から床下にもぐり込み、泥だらけで出てきた男の報告に女性は驚いた。
「風呂場から水が漏れて、床下一面がカビで真っ白です。すぐ床下換気扇をつけないと白アリが出て、家が危ない」というのだ。
女性は、その日のうちに25万円の契約を交わした。換気扇の代金だけで工事費は無料サービス、と言われて、気持ちが動いた。
「家が壊れたら住むところがなくなってしまう。お金は娘に借り、なんとか工面しました」
その後、建築士が調べると、女性宅の床下には水漏れもカビもなく、家が壊れる心配は全くなかった。その上、業者の工事は、換気扇が逆向きに取り付けられるなど、ずさん極まりない工事だったことがわかった。
「つけ込まれた自分が悪いのだけれど……。もう思い出したくもありません」。女性は、見知らぬ業者の訪問に、今もおびえている。
同センターの吉田直美さんは「孫ほどの若い作業員が、自分のために暗い床下にもぐって必死に調べてくれたと思い込む、お年寄りの優しい心を利用したひどい商法だ」と憤っている。同センターでは、警察などとも連携を深め、問題業者を特定するとともに、公民館などで広報活動をして、被害の拡大をくい止めたい考えだ。
(8/13)
http://mytown.asahi.com/iwate/news01.asp?kiji=6084
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