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■『被害者』が銀行に抗議
「貸し手責任を棚上げし、なりふり構わず、被害者の自宅を競売に掛ける。絶対に許すことができません」
大阪市中央区の御堂筋沿い。東京三菱銀行大阪支店前で「融資型変額保険被害者の会」(東京)事務局長の田崎アイ子さん(69)が声を上げた。同行子会社の信用保証会社に今月四日、自宅を競売に掛けられた大阪府内の公務員杉山利一さん(57)、佳子さん(53)夫妻を助けようと、競売の取り下げを訴えたのだ。
杉山さんは、父親(故人)と同居していた一九九〇年ごろ、三菱銀行の行員から「相続税対策」として、生命保険の加入を勧められた。断っていたが、勧誘は繰り返され、興味を示すと明治生命(現・明治安田生命)の担当者が来た。
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担当者は「保険料を株で運用する。運用利回り10%は軽い。25%の実績もある」と強調。保険料は銀行から借りるが、父親が亡くなった時、高利回りの運用益を上乗せした保険金で元金を一括返済できるほか、それまでの利息を引き、相続税を払っても余剰金が出る−などと説明された。
高額の保険料を加入時に一括して払う。その資金を銀行が融資する。つまり、保険への加入と銀行からの融資が一体となっている。だから、銀行が熱心に生命保険を勧めていたのだ。
九〇年九月に契約。父親の保険料は二億二千万円。当初二年の利息支払い分や、ほかの家族名義の保険料などを含め、融資額は四億五千万円。自宅と賃貸マンションを担保にした。リスクの説明はなかったという。
しかし、株価下落で、運用実績が悪化。相続税の支払いどころか、銀行借り入れの利息支払いや元金返済さえも難しくなることが分かった。
九四年、損失が出ることについて説明がなかったとして、三菱と明治に損害賠償訴訟を起こした。逆に三菱から貸し金返還請求訴訟を起こされ、ともに最高裁まで争ったが、両社の責任を立証できず、二〇〇二年に相次いで敗訴した。
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同じ年、父親は亡くなったが、杉山さんに代わって東京三菱に弁済し債権者となった信用保証会社が昨年十一月、死亡保険金三億円を差し押さえた。さらに融資残額など約一億六千万円が不足するため、自宅が競売に。賃貸マンションも競売される予定で、それでも残債があれば杉山さんの給料や退職金まで差し押さえる意向という。
「被害者の会」の支援を受け、銀行前で競売の取り下げを訴えた杉山さん。「銀行にだまされたという思いだ。会の支援がなければ自殺していたかもしれない」と話している。
杉山さんのケースについて東京三菱銀行は「最高裁の判決が出た以降も問題解決に向けて、誠心誠意話し合いを続けてきたが、やむを得ず競売に至った」と話している。
明治安田生命は「個別のケースなので、コメントは差し控えさせていただく」としている。
■欠陥性 認める判決も
「融資型変額保険被害者の会」の推定では、変額保険の「被害者」は全国で約一万人に上る。
変額保険は、バブル時代、融資を増やしたい銀行が生保会社と二人三脚で売り出した。不動産を持つ高齢者を狙い、相続税対策をうたって高額融資を展開した。
保険料を株や債券で運用し、運用実績に応じて保険金や解約返戻金が変動する。投資リスクが高い商品だが、元本保証の商品を扱うイメージが強い銀行が勧めていたことと説明不足が重なり、高い危険性を認識せずに加入した人が多かったようだ。
多額の借金をしてまで保険料を払い、その利息負担が重いことも問題だ。同会の会員が銀行などを相手に起こした訴訟は現在までに約六百四十件だが、大半で被害者が負けている。しかし、最近では「相続税対策として適格性を欠く」と商品そのものの欠陥性を認め、融資と保険の両契約の無効を認める判決も出ている。
同会は、旧大蔵省がこうした「欠陥商品」を安易に認可し、銀行の過剰融資を放置したと主張。国の責任も追及するため、秋をめどに国家賠償訴訟を起こすことを検討している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040812/ftu_____kur_____001.shtml