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瀬戸内に浮かぶ香川県の豊島は、波静かな季節である。北の丘から見下ろすと、フェリーや貨物船の航跡が白くきらめき、歌にうたわれたままののどかな景色に目を奪われる。
一九九〇年、兵庫県警の摘発により、十三年間で五十一万トンという史上最悪の産廃不法投棄事件がこの島で明るみに出た。その大半がシュレッダーダストである。廃自動車の解体、破砕時に残る樹脂やゴムなどの再利用困難なごみだった。
全島民の98%で申し立てた国の公害調停を経て、昨年ようやく島外撤去と無害化処理が始まった。島を元に戻すには、十年の歳月と五百億円の費用がかかる。この教訓が、自動車リサイクル法の制定を早くした。
日本では、一年に五百万台の廃車が出る。このうち百万台が中古車として輸出されるが、シュレッダーダストの排出量は五十五万から七十五万トンにも上る。われわれは車の利便を享受しながら、その行方を気にとめようともしなかった。ましてや、瀬戸内の小島にたどり着き、住民を苦しめていようとは。
廃車は、主にディーラーや整備業者を通じて産廃として扱われ、ユーザーには“買い替える”気持ちが強く、“捨てる”という意識が希薄になりがちだ。だが、捨てた車は視界から取り除かれても、決して消えてはなくならない。豊島事件は、そのことを教えてくれた。
自動車リサイクル法の施行で、再資源化が難しいとされるエアバッグとシュレッダーダスト、そしてエアコンのフロンガスのリサイクルと適正処理が義務づけられ、ユーザーがその費用を負担することになる。
購入時にユーザーが支払う九千−一万六千円の費用が示すのは、廃自動車はごみになるという忘れていた事実にほかならない。
メーカーには処理費用の明示も義務づける。法施行を前に自動車各社は、リサイクルしやすい車づくりに向かっており、ネットを使ってかかる費用を車種ごとに知らせる仕組みを作っている。
消費者はこれを受け止め、車選びの条件にリサイクルのしやすさや脱フロンを付け加えることが大切だ。
情報開示の進展と消費者の適切な選択が、ごみにならない車づくりの追い風だ。結局それが、自らの費用負担を減らし、第二の豊島の発生を未然に防ぐことになる。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040804/col_____sha_____003.shtml