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2004年08月03日(火) 00時00分

子どもを守ろう 浸透するネット (下) 親しくてもパスワードは秘密 東京新聞

 夏休みを前にした七月二日。群馬県桐生市の市立桜木中学校で、全校生徒三百五十四人と保護者約二十人が参加し、インターネット利用の危険やマナーを教える講習会が開かれた。

 講師は、ネットと子どもの付き合い方を考えるNPO法人「ねちずん村」(前橋市)の下田毬子(まりこ)さんと石川容子さん。「パスワードを友達に教えてと言われました。さあ、どうする?」。下田さんは生徒たちに問いかけた。

 パスワードは利用者の認証記号で、大手事業者が提供しているホームページの作成やチャット(会話)などを利用する際に打ち込む。生徒に提示した答えは、(1)教える(2)「交換しよう」と言って教え合う(3)家族以外には教えない−の三つ。

 「答えはもちろん(3)番です。パスワードは家の鍵のようなもの。親しくても鍵は交換しないでしょ。それ以外でも、住所や名前などの個人情報は教えないようにしましょう」

■悪口は書き込まず、丁寧な言葉を

 下田さんは、長崎県佐世保市の小六女児同級生殺害事件で女児たちがパスワードを交換し、被害女児のホームページを勝手に書き換えてトラブルになっていたことにも触れ、そう話した。

 相手の声の調子や表情が分からないネット上では、ささいな言葉から、感情的な書き込みに進展することがある。「フレーミング」(炎上)と呼ばれる現象だ。

 下田さんは「悪口は書き込まない。丁寧な言葉遣いを」と呼びかけて、「感情が収まらないときは時間をおいて待つ」ことをつづった小説の一文を朗読して聞かせた。

    ◇

 ネットシチズン(市民)から名付けた「ねちずん村」の結成は三年前。小中学校での学習開始を前に、各家庭が一斉にパソコンを購入する中、「子ども部屋に置いて大丈夫?」と、下田さんら母親三人が情報を集めたのが発端だった。

 米国では、親が目の届くところにパソコンを置き、家庭内で使い方のルールを相談。ネット上の有害情報から子どもを守る法律づくりも進んでいる。こうした米国を手本に、スタッフは親子が危険な実態を知って話し合い、利用時の約束などを決めることなどを訴えてきた。

 国内でもポルノや残虐映像など子どもに有害なサイトを見られなくする専用ソフトが出ているが、家庭ではまだ普及していない。ソフトを使うと、ブラックリストに登録された有害サイトへの接続を遮断する。大手ソフトメーカーのデジタルアーツ社(東京都港区)が七月に発売した「i−フィルター」の新製品(六千九十円)は約九千万サイトを登録し、自動的に日々更新される。

 同社経営企画本部の高松容子マネジャーは「ネット上には無修正の裸、子どもを殺して食べる動画など、ひどい情報が氾濫(はんらん)し、子どもも見ている」と言う。

    ◇

 佐世保事件の原因はネットだけではないが、保護者や周囲の大人、社会の“目”が抜け落ちていたのは確かだろう。

 中央大文学部の矢島正見教授(社会学)は「ネットが悪いのではなく、子どもが接するメディアの中身や利用方法の野放し状態を反省したい」として警鐘を鳴らす。

 「一見仲がいいが干渉しない親子関係、生活に苦しむ人たちや社会の矛盾などを見せず清らかな子に育てようとする教育、子どもが外で遊び回れない生活環境などを変えていかないと、どこかで似た事件は再び起きるだろう」

  (岩岡 千景)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040803/ftu_____kur_____000.shtml