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うわさでは、ネットをしていると、画面に「あなたは好きですか」と問う囲みの広告が現れ、「×」印を押して消した者は、殺される…という。
一人が帰宅し、ネット接続中に画面にうわさの広告が出現。血に染まった真っ赤な背景の広告は何度消しても消えず、突然、背後から首に両手が伸びて殺されてしまう。翌日、二人は動脈を切って自殺したと学校でうわさされる−。
深夜に最後まで見続けていたら気分が悪くなった。一九九八年に大ヒットしたホラー映画「リング」を思わせる内容だ。
六月一日に起きた長崎県佐世保市の小六女児同級生殺害事件の加害女児(11)が、この「赤い部屋」とその完成版のアドレスを五月初旬から自分のホームページのリンク集に登録し、見ていたという。
事件前夜には殺人事件が起きるテレビドラマも観賞していた。いずれもナイフで首を切り付ける残虐な場面が登場するなど、今回の佐世保の事件の手口と酷似する。
ほかに事件の約一カ月前、中学生同士が孤島で殺し合う映画「バトル・ロワイアル」続編のDVDをレンタルビデオ店から借りていたことが判明している。
残虐な殺人や遺体の場面が頻繁に出る暴力映像は、子どもたちにどんな影響を及ぼすのだろうか。
総務庁(現総務省)が五年前、首都圏などの小学六年と中学二年の約三千人と保護者を対象に行った調査研究では、「暴力的な映像への接触量が多くなるほど暴力行為をする」傾向が明らかにされている。
調査に参加し、「メディアと暴力」(勁草書房)の著書もあるICU(国際基督教大)の佐々木輝美(てるよし)教授は、「映像を見ることがすぐ行為に結びつくわけではない」と断った上で「子どもの頭の中に映像が蓄積されることが心配。佐世保の事件は蓄積が実際の行為を招いた典型例にみえた」と話す。
そして映像が暴力行為を招く過程を説明した米国の有名な類型を引用して、次のように読み解く。
「集団からはみ出した子が、自分を入れてくれない仲間への攻撃性やストレスを空想的に解消しようと暴力映像を見る。ところがストレスの解消には終わらず、映像にハマってしまう。何度も接するうちに暴力を学習してしまい、頭の中に行動の台本ができる。そして可能な機会が訪れたとき、実行に移す」−。
「あーあ、やっちゃった」。加害女児は被害女児の後ろからカッターナイフで頚(けい)動脈を切り、被害女児が倒れたときに、そう話した。さらに現場に十分以上とどまり、被害女児が死ぬのを冷静に見ていたという。
「バトル・ロワイアル」では殺人場面でクラシック音楽が流れるが、殺人などの出来事がクラシック音楽のような良い印象のものと一緒に提示されると、人は本来の悪い印象を失ってしまうという。同作品や続編では殺りく場面が連続するが、その頻度の多さも通常の感情反応を奪う。
佐々木教授は「ネットやDVDなどで個々の映像作品が簡単に子どもの手に入り、親がその中身をほとんど知らないことが問題だ」と指摘する。
メディア教育に詳しい千葉大の藤川大祐助教授は「親はネットやテレビの映像に一日何時間も接する生活に目を向けてほしい。早く寝る生活習慣をつけ、一人でネット遊びする環境をつくらず、お金がかかるときは必ず親に報告させる。メディアと賢く付き合えるよう子どもにかかわってほしい」と話している。
(岩岡 千景)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040728/ftu_____kur_____001.shtml