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2004年07月27日(火) 23時15分

NHKのサービス拡大どこまで 民放側は懸念朝日新聞

 総務省は27日、「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」を発足させた。地上デジタル放送を7年後に全世帯に普及させ、テレビを家庭の総合情報端末にする計画が進む中、テレビの将来を本格的に論議する初めての場となる。研究会発足の背景には、NHKのサービス拡大で他のメディアがつぶれれば、民主社会の前提となる「多様なメディアの存在」が損なわれかねないとの懸念が民放側にある。

 研究会には、放送やインターネットに関する法律、技術などの専門家13人が参加し、塩野宏・東大名誉教授が座長に選ばれた。

 会議では、まずNHKが地上デジタル放送の新サービスを示した。テレビ対応型携帯電話に向けて避難を呼びかける緊急警戒放送を送り、同時に最寄りの避難場所までの地図を呼び出すサービスを実演したり、インターネット接続機能でテレビ画面に過去の番組を呼び出したりしてみせた。

 出席者からは「リモコン操作が複雑で、お年寄りがついていけるだろうか」などの発言もあった。今後、新しいサービスに対する公共放送の対応などを討議する予定で、結果のとりまとめは来年夏以降になりそうだ。

 テレビ放送が始まって半世紀になり、受信料によるNHKと、広告収入による民放が共存してきた二元体制は岐路にさしかかっている。

 今年2月。都内で開かれたシンポジウムで、パネリストの民放幹部は「地上デジタルはNHKと民放の最終決戦場になるだろう。NHKの一人勝ちにならないようにしたい」と発言した。

 NHKは今年1月に発表した3カ年計画「NHKビジョン」で、地上デジタルを事業拡大の好機とする姿勢を鮮明にした。一方、日本民間放送連盟は翌月、反論見解を出した。

 当面問題になるのは、NHKが早期に始めるとしているBSでの24時間ニュースチャンネルだ。

 現行のNHK・BS受信料を据え置いたまま、BS1を24時間ニュースに切り替えた場合、視聴者は新たな負担なしに見ることができる。しかし、同種のニュース番組をすでに放送している民放には大きな脅威となることは確実だ。

 デジタルテレビにはインターネット接続機能が標準となっており、ブロードバンドとつながる機種も多い。デジタルテレビにプリンター接続機能を付ける場合の標準規格も今年2月、決まった。

 これが商品化されれば、テレビからニュースなどを印字することも可能になり、新聞などの印刷媒体に影響を与える可能性もある。

 放送制度に詳しい音好宏・上智大学助教授は「NHKの身の丈はどうあるべきか。多様な言論の市場をどう育てるか。視聴者からみると民放側の反発は業界エゴとみられないかなど、積み残されてきた問題は多い。多様な観点からの国民的な議論が急務だ。外国の状況も参考にし、国際的な視野に立った論議が望まれる」と話している。(07/27 23:15)

http://www.asahi.com/national/update/0727/038.html