2004年07月26日(月) 03時15分
三菱自「リコール問題」顧客離れ深刻 系列販社悲鳴(産経新聞)
低迷の長期化予想/経営体力限界も
リコール問題で顧客離れに歯止めがかからない三菱自動車で、系列販売会社の経営に深刻な影響が広がっている。会社清算や拠点統廃合の動きも出始め、三菱自は販社への支払い猶予といった支援を行う一方、政府も低利融資などの支援に余念がない。ただ、低迷は長期化が予想されるだけに経営体力の限界も懸念されている。
経済産業省が六月末に行った三菱自系列販社百七十社への調査によると六月の販売台数は前年同月比で半減から七割減の回答が最多で、「八−九割減」との答えも六社あった。
今月十三日に三菱自関連の中小企業支援策を決めた同省だが、地域経済や雇用への影響を考慮し、政府系金融機関の低利融資や、販社へのセーフティーネット(安全網)保証の発動も決めている。
すでに系列販社三社が特約店契約を解除し、このうち二社は会社清算手続き中。愛知県東部の直営販社で五店舗の閉鎖・統合も明らかとなっており、今後も同様の動きが予想されている。
販社の苦境に対して、三菱自は、ユーザーへの「愛車無料点検キャンペーン」や新車購入者向けの「三年間フルサポート&二十四時間点検サービス」を月三十万−四十万件ペースで実施中。
顧客つなぎとめと、店舗の点検整備費を本社が肩代わりする窮余の策を続けている。重要な販社には、車両代金の支払い猶予を認めるなど、多賀谷秀保社長は「ケース・バイ・ケースで対応すべく鋭意検討している」と追加支援も視野に入れている。
早期にリコール対応を終えて、八月中の広告再開で反転攻勢に出たい考えだが、そのシナリオが狂えば、販社の「脱落続出」という事態も起きそうだ。
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≪「苦渋の決断」…他メーカー車も扱い≫
≪生き残り模索…大半は整備や無料点検≫
東京・多摩地区の街道沿いで営業する独立系の三菱自動車販売店。六月末、三菱自動車と二十六年間続けた専売店契約を解除し、七月から他メーカー車も扱うサブディーラーに転換した。
「本当は、専売店で続けたかった。苦渋の決断です」。営業部長(五九)はこう漏らす。
三菱自では自社製品を扱う販売店の条件として男女別トイレ、子供の遊びコーナーの設置といった基準を設けている。しかし、この店は手狭のうえ、そうした設備に回す余裕資金も少ない。三菱自から基準を満たす投資を行うか、契約解除かを迫られたという。
全国の販売店が顧客のリコール対策に忙殺される中、この店の実施率は90%近くと全国トップクラスの成績を誇る。技術の高さとユーザーとの強いきずなを誇ってきた結果だが、「三菱オンリーで尽くしてきたのに、最悪の状況になって何の支援もないとは…」。
専売店としての契約解除と同時に、無料点検対応に雇ったアルバイトへの補助が打ち切られた。七月に入って店で売れた車は、他メーカーと中古三菱車の計六台のみ。三菱自の新車は、まだ一台も売れていない。
来店者は整備や無料点検が大半だ。近隣で閉鎖した三店舗の顧客もやって来る。工場長(四一)は、「忙しくても断れず、土日曜日は手が回らない。それでも、年収は(昨年より)百五十万円くらい下がる。(給与水準が下がり)子供の給食費が市から出るようになった」とこぼす。
近く、社名から三菱を外し「カープラザ」とする。看板を下ろす費用は自己負担だ。それでも閉店しないのは、「これまで売った千七百台のお客さんには迷惑をかけられない」(営業部長)と考えるためだ。
三菱車の欠陥隠しや車両火災が報道され、販売店を見る外部の視線は大きく変わった。来店し、怒鳴って帰る人もいるという。
「おしかりと考えているが、こういう人はごく一部。顧客の励ましが救いだ」(工場長)。苦闘の先行きはまだ見えないものの、三菱車の販売最前線は、必死に生き残りの道を模索している。(納富優香)(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040726-00000013-san-bus_all