2004年07月23日(金) 03時07分
<新潟豪雨>廃棄の家電製品 フロンを回収しないまま処分(毎日新聞)
新潟豪雨で床上浸水などの被害を受けた家庭から廃棄された家電製品が、オゾン層破壊や地球温暖化の原因となるフロン類を回収しないまま処分されていることが、NGOなどの調査で分かった。00年9月の東海豪雨では、廃棄された冷蔵庫などから大量のフロンが放出されたため、環境省は01年4月、都道府県などに大規模災害時のフロン回収・処理体制を整備するよう求める通知を出したが教訓は生かされなかった。NGO関係者は「同じように水害が起きている福井県では、適正に処理してほしい」と訴えている。
災害ボランティア活動などを実施しているNGO「オープンジャパン」(山田和尚代表)によると、床上浸水など被害が集中した新潟県三条市などで、被災した家庭から廃棄された冷蔵庫やエアコンが、信濃川河川敷の三条競馬場跡地に積み上げられ、パワーショベルなどでつぶされていたという。山田代表は「作業の一部始終を見ていたが、フロンは全く回収されないまま、冷蔵庫は次々とつぶされ、エアコンはカッターのようなもので室外機と切り離されていた。これではフロンはすべて大気中に放出されてしまう。これから処理が始まる福井県では適正処理してもらいたい」と指摘している。
山田代表らによると、東海豪雨では床上浸水した被災家庭から出された冷蔵庫やエアコンの約8割がフロンを抜かずに処理されたという。今回の新潟豪雨では同県警などによると約1万6500戸が床上浸水した。山田代表らはフロンや代替フロン計9トン以上が、大気中に放出された可能性があると試算している。
NPO「ストップフロン全国連絡会」の西薗大実代表は「法に基づかない場当たり的な対応では、今後の災害でもフロン類の大気放出が続く可能性が高い。回収、破壊義務があるメーカーにも対応を求めたい」と話し、環境省に自治体やメーカーへの指導を求める意見書を提出する予定だ。
一方、新潟県は「廃家電については、市町村が家電リサイクル法に従って適正に処理していると聞いている。フロン回収破壊法の対象となる業務用のエアコンや冷凍冷蔵庫については、これから関係業界に適正処理を要請する予定だ」と話している。また、環境省は「状況はよく把握していないが、新潟、福井両県にも適正な処理を求めていきたい」としている。【永山悦子】
【フロン】炭化水素の水素がフッ素や塩素に置き換わった物質の総称。毒性がなく化学変化しにくいため、冷蔵庫やエアコンの冷媒、精密機器の洗浄剤などに広く利用されてきた。塩素を多く含むCFC(クロロフルオロカーボン)はオゾン層破壊に関与することが分かり95年に生産が中止された。現在は塩素を含まない代替フロンが用いられているが、中には二酸化炭素の1万倍以上の温室効果を持つものもある。(毎日新聞)
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