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[温泉成分]「湯船の中身がわかる情報開示を」
夏休みは温泉でゆっくり、という人も多いことだろう。
温泉の施設や利用者は年々増えている。その一方で、温泉への信頼は揺らぎ始めている。
乳白色の湯で知られる長野県安曇村の白骨温泉の公共野天風呂で、湯を白濁させるために入浴剤を混入していた。数年前から白濁しなくなり、運営する旅館組合が、草津温泉の成分の入った入浴剤を毎朝混入していたという。
指摘を受けた旅館組合は入浴剤の使用をやめたが、白濁が偽物とわかって、がっかりした温泉ファンも多かろう。
昨年には、愛知県吉良町の吉良温泉の源泉が枯渇したにもかかわらず、泉質や効能を記載したパンフレットを発行していたことが発覚し、問題となった。
心を癒やしてくれる温泉が、「看板に偽りあり」では困る。だが、実際には、利用者が誤解しそうな、あいまいな温泉の表示がまかり通っている。
公正取引委員会は昨年、源泉に水を加えて薄めたり、一度使った湯を殺菌・循環して再利用したりしているのに、「天然温泉100%」「源泉100%」などと表示している事例が多いとして、業界に改善を求めた。
「天然温泉」の看板を掲げる施設の多くは、湯を再利用する「循環式」で、湧(わ)き出る湯を使い捨てる「源泉かけ流し」は少ない。誤解を招く表示が多いのは、温泉の情報公開に不備があるためだ。
温泉法は温泉の成分表示を義務づけている。だが、それは源泉の成分であり、浴槽の湯の成分や加水・循環の有無などについては、掲示の義務はない。
源泉かけ流しが理想だが、循環式が悪いわけではない。貴重な源泉を保護する上で必要な場合もあろう。ただし、利用者にきちんと表示するのが筋である。
公取委のアンケートでは、八割近くが「情報提供は不十分」と答えている。温泉業界も、加水の有無や給湯方法などの表示制度を始めた。だが、基準がわかりにくい上、参加施設もまだ少ない。
情報公開に向けた、温泉業界の自主努力に期待したい。それができなければ、温泉法の見直し論も出てくるだろう。
循環式の場合、清掃や消毒を怠ると、濾過(ろか)装置や配管などにレジオネラ菌が増殖する恐れがある。衛生管理の徹底が欠かせない。
問題は、感染が起きにくい源泉かけ流しの温泉にも、塩素消毒を義務づける自治体が増えていることだ。厚生労働省の指針を杓子(しやくし)定規に解釈した結果だが、名湯のありがたみは薄れてしまう。
衛生管理も大事だが、温泉文化を守る視点も大切にしたい。