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リコール(無償回収・修理)が遅れている三菱自動車製大型トラックのクラッチ系統の欠陥は、国土交通省がユーザーに「点検要請」を出す異例の事態に発展した。同社の商用車部門が分社化した三菱ふそうトラック・バスは9月上旬までに点検を完了させる方針だが、越えなければならないハードルは高い。
◆実施率は14%
東日本の中堅運送会社の車両担当者がこぼす。
「大口顧客なんだから何とか早くと頼んでいるが、なかなか進まない」
この会社のトラックは大小合わせて約4千台すべてが三菱製だ。うち600台がクラッチ系統の欠陥のリコール対象だが、点検を受けたのはまだ100台。微細な亀裂まで探し出す特殊な作業があり、点検は三菱ふそうの工場に任せるしかないが、とても手が回りきらない様子だという。
三菱ふそうによると、全国7万4千台のリコール対象車種で点検が終わったのは1万1千台(9日現在)だけだ。
◆走らぬわけには
「アクセルを踏み込んだ時、下からうなるような音がする。走らないわけにはいかないし……」
三菱製の大型トラックに乗る長崎県の運転手(51)が、仮眠していた神奈川県内のトラックステーションで言った。リコール対象車ではないが年式・型式が近い。破断の前兆とよく似た音が気になる。車は長崎を出発後、東京〜関西を何度も往復し、10日から2週間後に長崎へ戻る。点検を受けたいが、忙しくて時間がない。
昼夜を問わず走り続け、なかなか整備工場へ入れない長距離トラックが対象車種に多いこともリコールが遅れる要因だ。
◆300工場専念
三菱ふそうは14日、ようやく点検強化策を打ち出した。(1)全国300カ所にある販売会社の整備工場はクラッチ系欠陥の点検に集中させる(2)三菱ふそうから350人の応援を出して販売会社の整備士とペアを組ませる(3)ペアはクラッチ系点検に専従して効率を上げ、60日以内に点検を完了させる——というものだ。
しかし、この計画は作業が主に点検だけで順調に進むことを前提にしている。問題の部品に亀裂が見つかって交換が必要になれば、作業はまる2日がかりになり、目算は大きく狂う。
実際、5月のリコール届け出後に計9件の破断が明らかになった。破断の手前の段階の亀裂を抱えた車が相当数にのぼり、点検で次々と見つかる可能性もある。
「我々は前例のない課題に取り組んでいる。一定の時間は必要だ」
ビルフリート・ポート三菱ふそう社長は繰り返し強調している。
しかし、約束の「60日間」で点検が完了しない場合どうするか。重大事故が再び起きたらどうするか。自身の経営責任についてポート社長は明確にしていない。
〈三菱自動車製大型車のクラッチ系統の欠陥〉 クラッチを格納する金属部品「クラッチハウジング」が破断、この結果、エンジンの動力を後輪に伝える重さ約20キロのプロペラシャフトが脱落するなどし、最悪の場合、ブレーキが利かなくなったり、火災が起きたりする。この欠陥では02年に山口県内で冷蔵車の運転手が衝突死するなどの人身事故が3件起き、物損事故も13件起きた。(07/19 23:59)