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「冷汁」(ひやしじる)もそのひとつで、味噌やすまし汁などを、その器とともに冷やしたものを指すが、正統なものは鳥肉や鯛を焙り、細末にしたものを汁味噌の中で煮抜き仕立てにし、生姜、茗荷、浅葱、焼味噌、すり胡麻などを加えてから冷やしたものをいう。夏ばかりでなく、調理法に応じて四季いずれにも用いられ、日本料理の流派のひとつである四条流には「十二冷汁」という法式まである。女房詞(隠語の一種で宮中の女官らが使った)では「ツメタオシル」という。
江戸時代の『庖丁聞書』や『料理物語』には、鳥肉や鯛肉を焙り、細末にして汁味噌の中に入れて煮抜き、その汁に生姜、茗荷、浅葱、甘海苔(あまのり)などを入れる、とある。冷や汁に使う味噌を一度焼くことも教えているが、それは風味を出すためであろう。
さて、宮崎県西都市の冷や汁は、江戸時代の本流のものとは造り方を異にした、地域的発想によるものであろう。肉は使わず、魚のいりこ、豆腐、味噌がタンパク質、胡麻、ピーナッツが脂質、シソ、キュウリ、玉ネギが薬味となっている。これらの材料は、栄養学的、調理学的にみて実に知恵が深い。スタミナ不足を補う夏にあっては、誠に栄養のバランスが整い、特に豆腐を使うあたりは妙で、この冷や汁から摂取できるタンパク質の量は、肉を使った場合より勝っている。
また、体によい不飽和脂質やビタミン、ミネラル類も豊かに期待できる。そして、その汁を麦3対米7の麦飯にぶっかけて食べる術には脱帽ものだ。しっかりと炭水化物も摂っている。このような知恵の冷や汁は、ぜひ次の世代にも伝え続けて欲しい。