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職場での禁煙・分煙対策を怠ったため健康を害したとして、東京都江戸川区の職員河村昌弘さん(36)が同区に治療費や慰謝料として約32万円を求めた訴訟の判決が12日、東京地裁であった。土肥章大裁判長は「区は受動喫煙の危険性から原告の生命、健康を保護するよう配慮する義務があった」と指摘。96年当時、原告は医師の診断書を示して改善を訴えたのに、必要な措置をとらなかったとして区に5万円の慰謝料の支払いを命じた。
市民団体「全国禁煙・分煙推進協議会」によると、受動喫煙の被害をめぐる訴訟で雇用者側に賠償を命じた判決は初めて。判決は、受動喫煙に対する社員や職員の訴えを漫然と放置すれば一定の範囲で賠償責任を負う場合があるとの考えを示しており、職場での環境整備に重い責任を課したともいえそうだ。
判決によると、河村さんは95年4月に同区に採用され、都市開発部再開発第一係に配属された。当時の職場では自席での喫煙が認められ、その後設けられた喫煙場所も仕切りなしで部屋の中に置かれた。
もともと気管支が弱かった河村さんは同僚のたばこにより、目やのど、頭の痛みに悩まされ、96年1月には大学病院で「血痰、咽頭痛、頭痛など受動喫煙による急性障害の疑いがある」とする診断を受けた。
土肥裁判長は、受動喫煙の危険性に対し、区が安全上配慮すべき一般的な義務の内容について「危険性の態様や程度、被害結果など具体的状況に従って決まる」と指摘。その上で、河村さんが診断書をとって何とかしてほしいと上司に訴えた96年1月から、人事異動で別の部署に移る同年3月末までは、「区は、原告の席を喫煙場所から遠ざけるとともに、自席での禁煙を徹底させるなど速やかに必要な措置を講ずべきだったのに放置した」と認定。この間の精神的、肉体的苦痛に対する慰謝料を5万円と算定した。
一方、診断書が出る前については「症状と受動喫煙との因果関係を認めるに足りる証拠がない」などとして配慮義務違反は問えないとした。96年4月以降についても、異動先の部署には強力な換気装置が設置され、分煙対策が進んでいたことなどから賠償の対象にならないとし、原告の請求を棄却した。
同区総務課は「現在は本庁舎に分煙室を16カ所設けて対策をとっている。今後の対応は判決文を読んだ上で検討したい」としている。(07/12 20:29)