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[通信白書]「ネットの安全性をどう高めるか」
光が強ければ強いほど、その影もまた暗さを増す。
総務省がまとめた今年の「通信白書」は、日本の高速大容量(ブロードバンド)通信が、世界最高水準に達したと分析する一方、高度情報社会の負の側面も拡大していることに警鐘を鳴らしている。
個人情報の漏洩(ろうえい)やコンピューター・ウイルスの流行を防ぎ、情報ネットワークの安全性を高めなければならない。
地域的な情報格差(デジタル・ディバイド)がこれ以上広がらないよう、官民が知恵を絞る必要もある。
光ファイバーやADSL(非対称デジタル加入者線)による高速通信は今、本格的な普及期を迎えている。
高速通信の加入者は昨年度末、千四百九十五万人に達した。一昨年の国際比較では、加入者数が米国、韓国に続く三位を占め、普及率も九位となった。
一秒に十万ビットの情報を送受信する料金は9セントと、韓国の25セントを大きく引き離して世界一安い。米国は3ドル53セントだ。
こうした状況を踏まえ、白書は、いつでもどこでも情報ネットワークと接続できる「ユビキタス社会」の実現が、夢ではなくなったと指摘する。
外出先から携帯電話で家庭のエアコンや洗濯機を操作したり、タクシーの中からテレビ会議に参加したり、どんな農薬が使われた野菜か、生産の履歴が店頭に表示されたりする時代の到来である。
白書は、ユビキタス・ネットワーク関連市場が二〇一〇年には約88兆円に広がり、約121兆円の経済波及効果をもたらすと推測している。
しかし、利用者側はネットワークの高度化に対し、「詐欺・悪質商法に遭う」「企業から個人情報が流出し、不正利用される」などの不安を抱いている。
最近も通信事業者から大量の個人情報が流出する事件があった。消費者金融会社から加入者情報が流出した事件では、その情報が架空請求に悪用された。
それなのに、東証上場企業を対象とする総務省の調査では、約四割が個人情報保護に「特に何もしていない」と答えている。意識の低さは危機的だ。
コンピューター・ウイルスも次々に新種が現れ、利用者は対策に追われた。
安全性を向上させずに「ユビキタス」と浮かれるわけにはいかない。
高速大容量通信は、すべての市に普及しているが、町村の22%、過疎地の39%では、サービスが提供されていない。
全国にくまなく光ファイバーを張り巡らすのはコスト的に難しいが、無線系の高速通信など代替措置は検討したい。このままでは過疎化がますます進む。