悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
「世間を偽るには世間並みの顔をなさいませ」とはシェークスピア、劇中のせりふである。饒舌(じょうぜつ)な広報担当者も気弱そうな顧問弁護士も、言葉と法を尊重してみせる「世間並みの顔」だったのだろう◆警察庁の国松孝次長官が狙撃された朝、オウム真理教の広報担当者はテレビのワイドショーに出演していた。放送中に届いた事件の一報に、「われわれを圧迫する勢力の犯行でしょう」と、よく回る舌で語っている◆あの朝から九年、警視庁はきのう、元信者ら四人を逮捕した。地下鉄・松本の両サリン事件、坂本弁護士一家の殺害事件…オウム教団の素顔は次々と暴かれた。隠れた顔がまだ残っていたとは、教団がまとう闇の深さに、いまさらながら息をのむ思いがする◆狙撃の実行犯は分かっていない。逮捕者のひとりは事件の翌年、「自分が撃った」と供述した。警察は裏付けがとれず、立件を見送った経緯がある。急転直下の解決に至った捜査の過程も含め、数々の謎が明らかにされていくだろう◆教団はかつての教祖、松本智津夫被告と縁を切り、害のない宗教団体に生まれ変わったと主張しているが、逮捕されたひとりは現役の信者である。つい数日前には、薬の無許可販売で教団の最高幹部が逮捕されている◆「世間並みの顔」の下に、昔ながらの異形の風貌(ふうぼう)がちらつく。