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2004年07月06日(火) 00時00分

冷や汁(宮崎県西都市・佐土原町)読売新聞


“はたけぼら”(大根など畑でできた作物)の煮しめや、ジャガイモと地鶏の煮物などが並ぶ食卓を囲んで冷や汁を食べる、保存会のみなさん  キュウリやシソ、ミョウガなどの夏野菜を浮かべた味噌ベースの冷たい汁を、熱々の麦飯にかけて食べる宮崎の夏の風物詩、冷や汁。最近は都会のレストランのメニューにも加わり、新宿にある県の物産センター「宮崎館KONNE(こんね)」でも冷や汁の素が人気を呼んでいる。本場では、イリコにゴマ、味噌に野菜といった食材を使い、忙しい農家の即席スタミナ料理として親しまれてきた。夏野菜が旬を迎える今、おふくろの味を求めて西都市と佐土原町の家庭を訪ねた。

忙しい農家のファストフードからスローフードへと変化した冷や汁

 「冷や汁は元々農民食、陣中食と言われ、農家が朝の忙しい合間をぬって、井戸水で味噌を溶かした汁に、庭先の夏野菜を刻んでいれ、ご飯にかけてサッと食べ、野良仕事に出たのではないかと思います。しかし第二次大戦後、各家庭で工夫し、手間のかかる料理に変化してきたのではないでしょうか」と、宮崎県西都市の冷や汁保存会会長の森貞子(ていこ)さんは語る。

 森さんの冷や汁も手間のかかるもので、作り方はまず、頭と内臓をとったイリコ、ゴマ、ピーナッツをすりばちですり、細かくなったところで、合わせ味噌を加えて混ぜる。ペースト状になった味噌を、すりばちに5ミリくらいの厚さにのばし、それをすりばちごとひっくり返してコンロの直火で焼く。焼き味噌の香ばしい香りが台所に立ち上り、茶色に焦げ目がつくまで焼いたら、湯のみ1杯の熱湯を注ぎ、すりばちでさらによく混ぜる。ここでイリコのだしがでるのでしっかり混ぜるのがポイント。

 次に手でつぶした豆腐を入れて混ぜ、味をみながらひたひたになるまでさまし湯をいれていく。最後にキュウリ、シソ、タマネギなどの薬味を入れたらできあがり。

 汁は冷蔵庫でよく冷やしたものを使うが、真夏はさらにこれに氷を浮かべて、麦3対米7の熱々麦飯にかけて食べる。



森さんの冷や汁は、イリコやゴマ、ピーナッツをたっぷり使うので味にコクと深みがあり、キュウリのパリパリ感、シソの爽やかさが食欲をそそる  見た目は単なるぶっかけ飯だが、食べてみるとイリコの香りに焼き味噌の香ばしさ、ゴマとピーナッツのコク、パリパリとしたキュウリが絶妙のバランスで、どんどん箸が進んでしまう。

 冷や汁のベースとなる焼き味噌は、冷凍しておけば1年はもつので、西都市赤十字奉仕団の防災食ともなっている。

 西都市の隣町、佐土原町の福田精子さん宅では、ショウガ農家ということもあって、薬味にショウガが加わる。「ショウガは新陳代謝を活発にしますし、冷や汁は暑い夏でもさらさらと食べられるので、我が家は夏バテ知らずです」と福田さん。

 福田さんの冷や汁は、イリコはすらず、頭と内臓をつけたままダシをとり、すりばちですったゴマとオーブンで焼いた味噌を混ぜ合わせたものに、イリコダシを加えてのばしていく。豆腐はすりばちですらず、手でザクザクとつぶしながらいれるので、形が残っていて食べごたえがあった。

 宮崎の家庭では、基本的にいりこを使用するが、レストランなどではアジやカマスなどの魚を焼いてほぐしたものを使ったりもする。薬味はキュウリやシソのほか、焼きナスやミョウガ、大根の千切りなど各家庭で様々というのも冷や汁の魅力の一つだ。(文/中 文子 写真/南 雄二)



西都原古墳群(さいとばるこふんぐん)0983-41-1557(西都原ガイダンスセンターこのはな館/月曜休/9時〜17時)/見学無料/中を見ることができる古墳は10時〜17時、月曜(休日の翌日※土、日曜、祝日を除く)休/このはな館内のレストラン「旬彩家」では9月末くらいまで冷や汁定食(750円)もだす(ランチ11時〜16時)/交通=日豊本線高鍋駅からバス40分、西都バスセンター下車タクシー10分/東九州道西都ICから約10分

新宿みやざき館KONNE(03・5333・7764/11時〜21時/無休/新宿駅南口下車すぐ)では、冷や汁の素を常時8種類そろえる。人気は宮崎経済連直販の「ひや汁の素」(75グラム157円)と向洋食品の「ひや汁」(180グラム315円)。地方発送も可(送料別)

旅行読売2004年8月号より

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/gourmet/fudoki/fd040801.htm