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忙しい農家のファストフードからスローフードへと変化した冷や汁
「冷や汁は元々農民食、陣中食と言われ、農家が朝の忙しい合間をぬって、井戸水で味噌を溶かした汁に、庭先の夏野菜を刻んでいれ、ご飯にかけてサッと食べ、野良仕事に出たのではないかと思います。しかし第二次大戦後、各家庭で工夫し、手間のかかる料理に変化してきたのではないでしょうか」と、宮崎県西都市の冷や汁保存会会長の森貞子(ていこ)さんは語る。
森さんの冷や汁も手間のかかるもので、作り方はまず、頭と内臓をとったイリコ、ゴマ、ピーナッツをすりばちですり、細かくなったところで、合わせ味噌を加えて混ぜる。ペースト状になった味噌を、すりばちに5ミリくらいの厚さにのばし、それをすりばちごとひっくり返してコンロの直火で焼く。焼き味噌の香ばしい香りが台所に立ち上り、茶色に焦げ目がつくまで焼いたら、湯のみ1杯の熱湯を注ぎ、すりばちでさらによく混ぜる。ここでイリコのだしがでるのでしっかり混ぜるのがポイント。
次に手でつぶした豆腐を入れて混ぜ、味をみながらひたひたになるまでさまし湯をいれていく。最後にキュウリ、シソ、タマネギなどの薬味を入れたらできあがり。
汁は冷蔵庫でよく冷やしたものを使うが、真夏はさらにこれに氷を浮かべて、麦3対米7の熱々麦飯にかけて食べる。
冷や汁のベースとなる焼き味噌は、冷凍しておけば1年はもつので、西都市赤十字奉仕団の防災食ともなっている。
西都市の隣町、佐土原町の福田精子さん宅では、ショウガ農家ということもあって、薬味にショウガが加わる。「ショウガは新陳代謝を活発にしますし、冷や汁は暑い夏でもさらさらと食べられるので、我が家は夏バテ知らずです」と福田さん。
福田さんの冷や汁は、イリコはすらず、頭と内臓をつけたままダシをとり、すりばちですったゴマとオーブンで焼いた味噌を混ぜ合わせたものに、イリコダシを加えてのばしていく。豆腐はすりばちですらず、手でザクザクとつぶしながらいれるので、形が残っていて食べごたえがあった。
宮崎の家庭では、基本的にいりこを使用するが、レストランなどではアジやカマスなどの魚を焼いてほぐしたものを使ったりもする。薬味はキュウリやシソのほか、焼きナスやミョウガ、大根の千切りなど各家庭で様々というのも冷や汁の魅力の一つだ。(文/中 文子 写真/南 雄二)
新宿みやざき館KONNE(03・5333・7764/11時〜21時/無休/新宿駅南口下車すぐ)では、冷や汁の素を常時8種類そろえる。人気は宮崎経済連直販の「ひや汁の素」(75グラム157円)と向洋食品の「ひや汁」(180グラム315円)。地方発送も可(送料別)