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活況が続く株式市場で、インターネットを通じて1日に何度も取引を行う個人投資家の投機的な売買が目立っている。ゲーム感覚による投資が、企業の実体にそぐわない株価を形成したり、注文件数の急増で東京証券取引所がシステム増強を余儀なくされるなど、様々な波紋も広がっている。(安江 邦彦)
◆ターゲット
株価が大幅に下落した5日の東京株式市場で、特に目立ったのが、ネット投資家が好む経営再建中の「再生銘柄」の下げだ。
UFJ銀行の大口融資先であるミサワホームホールディングス株の終値は前週末比38円(9・7%)安の352円と、この日の東証1部で最大の値下がり率を記録、同じUFJ銘柄の長谷工コーポレーションも値下がり率2位となった。立花証券の平野憲一・情報企画部長は「この手の株は、ネット投資家の動向に左右される」と解説する。
丸石自転車の持ち株会社である丸石ホールディングス(HD)の場合、6月8日に東証2部に上場してから3日連続して出来高が2億株を超え、9日には約2億4000万株と、1銘柄で2部の出来高(約2億9000万株)の8割以上を占めた。
丸石HDは上場直前に、丸石自転車に架空増資疑惑が発覚したため、東証は投資家への注意喚起のため、上場時に監理ポストに割り当てた。しかし、ネット投資家は短期売買を殺到させ、初日に一時8円まで下げた同社株は、翌9日には15円で引けるなど、経営状況と無関係に乱高下した。
不祥事が相次ぐ三菱自動車株には、空売りが浴びせられた。ネット投資家は通常の個人投資家より信用取引を活用する傾向が強い。現金や株券などの形で一定の委託保証金を証券会社に預ければ、空売りできるため、株価が下落傾向の同社株は格好の標的となった。
◆投資行動
インターネットの発達や株価上昇に加え、ネット証券が手数料の値下げ競争を繰り広げ、幅広い投資家を市場に呼び込んだこともある。4月からネット取引を本格的に始めた東京都内の男性デザイナー(43)は「1日5、6回注文する」と語る。株式の長期保有を考えない投資家が続々誕生しているのだ。
ただ、大量の資金を持ち、安く仕入れた株を値をつり上げて売り抜ける行動を取る仕手戦グループとは全く異なる。ネット投資家は資金量も限られ、投資判断は個人で行う。ネットの掲示板などの情報を通じて、値動きしそうな銘柄を見つけると、不特定多数が同様の投資行動を取るため、株価を乱高下させてしまう傾向がある。東海東京証券の鈴木誠一・マーケットアナリストは「経験や情報から瞬時に感覚的に売買を行うという点で、時代が生んだ新たな投資家」としている。
◆注文大幅増
大量の注文をこなすため、東京証券取引所は約70億円かけて、来春に1日当たり620万件の注文に対応出来るシステムを導入する。現在の1日あたりの注文件数は250万—300万件と、昨年4月の100万件台から大幅に増え、450万件に対応できる現行システムでもいずれ能力が不足すると見ているためだ。
大阪証券取引所では、ネット投資家対策も視野に、新興企業向け市場ヘラクレスに、債務超過で1か月の平均株価が一定の価格(売買単位が1000株の場合、10円未満)を下回った銘柄を上場廃止にする新基準を設ける。
大和総研の吉川満・資本市場調査本部長は「特定銘柄への資金集中は他の銘柄の株価形成にも影響し、市場の信頼も損ないかねない」と警鐘を鳴らしている。