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牛モツ料理は高級品になってしまうのか——。牛海綿状脳症(BSE)対策で、牛の腸を輸入しづらい内容に国際安全基準が変わったため、焼き肉店やモツ鍋店に波紋が広がっている。腸は昨年まで国内消費の約半数が輸入ものだった。米国でのBSE発生で輸入が止まり、腸の価格は急上昇を続けている。モツ料理はスタミナ食として夏が本番。業界の不安は高まるばかりだ。
日本では腸のうち小腸の一部(回腸遠位部)を除去してモツ料理に利用している。
腸の消費のほぼ半数は外国産で、うち9割が米国産が占めていた。しかし、米国の昨年末のBSE発生で肉とともに輸入停止となった。国内の在庫も底をつき始め、国産価格も高騰している。
そうした中、動物衛生の基準を決める国際獣疫事務局(OIE)が5月末、BSEの汚染度が中程度以上の国を対象に、BSEの病原物質が蓄積しやすい特定危険部位を「小腸の一部」から「腸全体」に広げ、貿易の対象外にした。日本は国内対応を変える予定はないが、輸入が難しくなる可能性も出てきた。
■てっちゃん
焼き肉店が軒を連ねる大阪・鶴橋。駅を降りるとすぐ、煙とキムチのにおいが漂ってくる。
老舗(しにせ)の仕入れ担当者は、今回の改定に「死活問題」と危機感をあらわにする。
焼き肉店では一般に大腸を「てっちゃん」、小腸を「こてっちゃん」と呼ぶ。米国産の輸入禁止後、ともに仕入れ値は天井知らずで、キロ1000円が今では3000〜4000円になった。国産だけでの穴埋めはできず、豪州産のほか、ブラジルやコスタリカなどからも輸入しているという。
今は値上げできない状態が続いている。「米国以外からの輸入も止まったら、てっちゃんなどは『時価』で販売される高級品になってしまう」と担当者は嘆く。
■豚に切り替え
大手焼き肉チェーンの安楽亭(本社・さいたま市)は3月末で牛の腸の在庫がなくなった。豪州産だけではまかなえず、「国産も十分な量は入手できない」と4月から豚の腸に切り替え、「Pホルモン」として売り出した。ハラミやタンでも豚を使い始め、昨年4月は全メニューのうち83%だった牛の品目は66%に落ちた。メニューの豊富さで乗り切る構えだ。
焼き肉店「牛角」を全国展開するレインズインターナショナル(本社・東京都)でも牛腸の在庫切れが迫り豚との併用を続けている。
製造業でも同様だ。米国産の牛腸を原料にしている食肉加工大手のエスフーズ(本社・兵庫県西宮市)は、主力商品「こてっちゃん」の生産を6月上旬に一時休止した。米国産が入らず原料が底をついたためだ。代替品として3月から、米国産の豚の腸を原料にした「とんとこ」を関東で販売し始めている。
■モツ鍋もピンチ
博多モツ鍋店。創業60年余りの「万十屋」の松隈幸子社長は「1人前900円で200グラムのモツ鍋を売り物にしているので、値上げもできず量も減らせない」と嘆く。同店は国産の牛腸を使っているが、米国産の輸入が止まって国産も仕入れ価格が3割高に。さらに年が明けてから2割上がった。今後、国産の入手が困難になる場合も想定して豚や馬のモツ鍋メニューの検討を始めたという。
<BSE国際基準>
国際獣疫事務局(OIE)が、5月改定した。加盟国の国内基準や輸出入の2国間合意への強制力はないが、世界貿易機関(WTO)の貿易基準となっている。腸全体を特定危険部位にし、輸出入の対象からはずした理由として、(1)回腸遠位部(小腸の一部)を他の腸管と分離するのは困難(2)腸管には感染性があるかもしれないリンパ組織を含む可能性がある、をあげている。日本は回腸遠位部の分離はできるなどとして改定に反対している。しかし、アジアなど一部の国にしか腸を食べる習慣がないこともあり、日本の主張は支持されなかった。
(07/05 12:17)