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2004年06月27日(日) 00時00分

デジタル摩擦で日本攻勢 特許紛争相次ぐ 東京新聞

 電子部品を守れ−。「デジタル家電ブーム」に乗る日本の電機各社が、特許侵害などを理由に、相次いでアジアのメーカーに法的手段で対抗し始めた。デジタルカメラやプラズマディスプレーなど、久々の売れ筋商品を抱え、世界でリードを保つのが狙いだ。ただ国内外で協業が進んでいる業界でもあり、単純に「日本対海外」の図式になるとは限らない。

  (経済部・栗原淳)

◆提 訴

 「業界の公正な競争を復活させる」。十六日、安い輸入品の半導体に関税を課すよう、財務省に訴えたエルピーダメモリ(東京)の担当者は強調した。エルピーダは、パソコンなどの情報を記憶するDRAM(メモリーの一種)製造で国内唯一の専業。NECと日立製作所の事業部門が統合してできた。

 提訴の相手は韓国の半導体大手ハイニックス(旧現代電子)だ。二〇〇三年の半導体市場で世界第十六位の同社は、巨額の負債を抱え韓国経済の火種となっている。

 エルピーダは、ハイニックスが韓国政府から実質的な輸出補助金を受けていると主張した。経営再建につなげようとする政府の後押しが、安価なメモリー生産を実現させているというわけだ。

◆復 権

 エルピーダの親会社にとって提訴は、復権に向けた意思表示でもある。一九八〇年代後半、世界の半導体市場を独占した日本企業は、アジア勢の台頭や外資系半導体の一定シェアを保証する日米半導体協定などで急速に力を失った。

 エルピーダは十日に工場新設を発表。携帯電話、DVDレコーダーなどデジタル家電向けの強化を狙う。

 日立と三菱電機のシステムLSI(高密度集積回路)事業などを統合して発足したルネサステクノロジ(東京)も、立場は同じ。二月、台湾の半導体企業ナンヤ社をメモリー(記憶素子)関連の特許侵害で訴えた。

 ルネサスは、〇三年の半導体市場で三位。同市場の首位、米インテルは別格として、二位のサムスン電子以降は団子状態で地位が安定しない。長沢紘一会長は、「デジタル家電はわが社の生きる道。攻めも守りも力を入れる」と力を込める。

◆遅 れ

 “デジタル摩擦”ともいえる日本企業による権利主張は、技術で立ち直りを図る日本勢にとり「アジア勢の技術の高さが無視できなくなった」(金子直哉・日本総研上席主任研究員)証拠でもある。半導体市場調査会社アイサプライ・ジャパンの豊崎禎久社長は「米国企業に比べ、日本企業はあまりにも知的財産対策がおろそかだった」とも言い切る。

 富士通は今年六月、韓国の電機大手サムスンSDIと、プラズマディスプレー用パネルの特許料支払い問題で和解した。だが同四月に特許侵害で提訴するまでの二年間で、サムスンはシェアを二割まで拡大。ハイニックスの例でも、欧米での相殺関税適用が決まってから動きだしており、対応の遅れが重大な結果をもたらしている。

 だが、デジタル家電分野では、ソニーがサムスン電子と液晶テレビ用パネルで合弁事業を展開。アジア製部品は当たり前のように使われているのが現実だ。サムスンに対する日本の措置が同社の息の根を止める事態になれば、韓国国内で対日批判につながりかねない。

 安値の台湾製液晶テレビが特許侵害に当たるとして、シャープが起こした販売停止の仮処分申請に対し、この製品を販売している大手スーパー、イオンがシャープとの取引停止を表明(その後撤回)する騒ぎにもなった。技術をめぐるアジア企業とのあつれきは、消費者にも波及する恐れもある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040627/mng_____kakushin000.shtml