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3月期決算の企業の株主総会が29日にピークを迎える。株式の持ち合い解消が進み、株主の権利保護や情報開示の充実といった企業統治が注目される中、かつては年に1回の儀式と化していた株主総会にも変化の兆しが見える。企業の取り組みと、変わりつつある株主総会の「今」を追う。(佐藤 公寛)
◆個人株主
居酒屋チェーンなどを経営するワタミフードサービスの総会が26日午後、東京ベイNKホール(千葉県浦安市)で開かれた。サラリーマンの株主に配慮した同社初めての土曜開催だ。約2300人の株主と家族ら計約3500人が出席した。会場には店舗で使う有機野菜を並べたコーナーや子供が遊べるコーナーも用意。総会とその後の説明会で、開催時間は4時間近くに及び、40人以上の株主と質疑を交わした。
総会後、渡辺美樹社長は「これほど多くの方が来てくれるとは。『今度、株買うから』と言ってくれた株主の同伴者もいた」と述べ、株主数で約9割を占める約5万1000人の個人株主を重視し、“PRイベント”の性格を持たせた今年の株主総会に満足の様子だった。
株式の持ち合い解消が進み、企業は新たな安定株主として個人株主を重視し、ファンを増やそうと躍起だ。企業にとっては消費者でもある株主を引きつければ、自社製品の販売増につながる期待もある。
今年の総会では、サンリオが初めて自社のテーマパーク「サンリオピューロランド」を会場にし、日産自動車は、昨年好評だったカルロス・ゴーン社長との総会後の懇談会を再び開催、レコード会社のエイベックスは27日の総会後に株主を対象にしたライブコンサートを開く。全国の証券取引所の調べによると、昨年度の個人株主の延べ人数は、前年度比23万人増の3400万人で、8年連続で過去最高を更新した。
◆報酬開示
個人株主の増加もあり、経営の透明性を求める株主の声は一段と強まっている。日興コーディアルグループは24日の総会で、昨年の役員の退職慰労金廃止に続き、今年は会長、社長ら代表取締役4人の役員報酬を、金融機関で初めて個別に開示した。
役員報酬の個別開示は、2000年以降、大阪市の企業監視グループ「株主オンブズマン」(代表=森岡孝二・関西大教授)や機関投資家の厚生年金基金連合会などが求めてきた。
「株主オンブズマン」は、昨年に続いて今年も、22日のソニーと23日のトヨタ自動車の総会で、役員報酬の個別開示を求める株主提案をした。採決での賛成の割合は、トヨタが前年を4・6ポイント上回る19・9%、ソニーは1ポイント上回る31・2%だったが否決された。
だが、企業統治を考える経営者の団体、日本取締役協会(会長・宮内義彦=オリックス会長)は、2、3年後をめどに役員報酬の個別開示を検討する方針を10日に表明、今後広がる可能性はある。
◆進む電子化
2002年に解禁されたインターネットによる議決権の行使を導入した企業は、東京証券取引所に上場する企業のうち200社以上に達した。NTTドコモは18日に開いた今年の総会から携帯電話のiモードを使った投票を始めた。インターネットとiモードで投票した株主は、全株主の4・5%と、インターネットだけだった昨年の2倍近くに増え、早くも定着しつつある。
◆個人株主=個人で株式を保有する投資家のこと。巨額の資金を運用する機関投資家や外国人投資家と区別して使う。企業が株式の売買単位を引き下げたことが、個人株主が増える一因となっている。個人投資家が増えれば株式市場の活性化にもつながるため、個人が投資しやすい環境を拡充すべきだとの意見も根強い。