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2004年06月26日(土) 00時00分

卑劣な個人攻撃 時代に憂い 松本サリンあす10年 「地域から排除、抹殺される寸前まで追い詰められたことは忘れない」と当時を振り返る河野義行さん=長野県松本市の自宅で 東京新聞

 七人の死者と約百五十人の重軽症者を出した松本サリン事件から二十七日で丸十年。いわれのない疑いと戦った被害者の河野義行さん(54)にとってそれは、「冤罪(えんざい)」を真正面から見据える歳月でもあった。イラクの邦人人質事件や長崎県の小六同級生殺害事件など、大きな事件のたびに起こる被害者や加害者、その家族らへのバッシング。河野さんの目に映るのは「個人制裁が脈々と続くこの国の姿」だ。 (名古屋写真部・乾 高弘)

 一九九四年六月二十八日夜、長野県警は「被疑者不詳」で河野さん方を家宅捜索。以来、河野さんには「容疑者」のレッテルが張られた。

 「ガス室で死にさらせ」「家に火をつけて殺す」「被害者面した加害者」…。いやがらせの無言電話や中傷の手紙が一年以上続き、五十−六十件もの電話が自宅にかかった日もあった。

 「眠れなかったことが一番つらかった。睡眠薬を飲んで寝付いたと思えば、容赦なく電話が襲いかかってくる。点滴をしながら二十四時間攻撃される憤りは、味わった人間でないと分からない」

 当時、インターネットが今のように普及していたら−。そう考えると、背筋がぞっとする。「卑劣だよね。反論できない状況をつくって攻撃するんだから。偏見や思い込みで一市民が個人を傷つけるなんて許される?」

 イラク人質事件では政治家や閣僚らの「自己責任」発言から火がつき、人質や家族へのバッシングが一気に広がった。「日本を代表する人たちが言葉の重さを分かっていない。マスコミやネットの影響力の大きさを考えたら、むしろ慎重になるのが当然だ」と言う。

 「私が世間のイジメに遭っていたのは、十年の中のわずか一年余かもしれない。でも、精神的なつらさや受けた傷が癒えるまでには何倍もの時間がかかる」。匿名で個人攻撃する人たちについては「正義感のかけらもなく、単に憂さ晴らしをして楽しんでいるだけ」と切り捨てる。

 小六女児殺人事件では、事件発生直後からインターネット上で加害者の個人情報が流出した。ひとたび事件が起きると、あっという間に関係者の過去やプライバシーが暴かれてしまう時代。「これからも繰り返されるよ、きっと」。河野さんは憂うようにつぶやいた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20040626/mng_____sya_____002.shtml