2004年06月26日(土) 00時39分
オウム松本被告の控訴審めど立たず、いらだち募る遺族(読売新聞)
オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫被告(49)が、1審判決(死刑)から4か月たった今も、二女が選任した新たな私選弁護人2人との接見を拒否し、控訴審開始のめどが立たない状態が続いている。
1審の膨大な裁判記録が、異例の早さで控訴審の舞台となる東京高裁に送られながら、手続きが進まない現状に、被害者、遺族のいらだちは募る。
◆早かった記録送付◆
東京地裁で審理された松本被告の1審は、7年10か月に及び、その裁判記録は約5万5000ページにも上る。
通常、1審の記録は判決後に、供述調書や鑑定書など証拠の種類別に分類・整理されるため、高裁に届くまでには一定の期間を要する。元教団幹部の遠藤誠一被告(44)(控訴中)の場合は1年2か月、井上嘉浩被告(34)(上告中)は9か月かかった。
これに対し、松本被告の記録は、飛び抜けて量が多いにもかかわらず、2月27日の判決から、わずか2か月で東京高裁に送付された。
東京地裁が判決前から証拠の分類・整理を進めていたことなどが、期間短縮につながったという。
ところが、記録が東京高裁に移ってから、動きは止まった。刑事訴訟規則上、1審の記録を送付された高裁は、控訴理由を書いた控訴趣意書の提出期日を控訴人に「速やかに通知」しなければならないが、同高裁が、松本被告が接見を拒否している事情などを考慮し、いまだに期日を指定していないためだ。
◆「趣意書書けない」◆
松本被告の私選弁護人は「弁護方針を立てるには、被告との接見は不可欠で、控訴趣意書を検討する段階にない」と強調。提出期日を定めること自体を「時期尚早」とし、迅速審理を重視する最近の傾向をけん制する。
1審で死刑判決を受けた他の元教団幹部の裁判でも、1審判決から控訴審開始までに1年7か月—3年程度かかっており、準備期間が必要なのは確かだ。
しかし、あるベテラン裁判官は「松本被告は1審段階で接見を拒否しており、控訴審でも接見できないことは予想されたはずで、控訴趣意書が書けない理由にはならない」と指摘。「弁護人が控訴趣意書を出さない状態が続くなら、裁判所の職権で国選弁護人の選任も検討すべきだ」と語る。
ただ、国選弁護人の選任は、私選弁護人のいない被告の救済措置という大前提がある。既に私選弁護人がいる松本被告に、裁判所が職権で国選弁護人をつければ、「弁護権の侵害」と弁護士会の反発を招き、逆に控訴審開始が遅れる可能性もある。
松本サリン事件で犠牲になった伊藤友視さん(当時26歳)の父、輝夫さん(70)は、嘆く。
「遺族、被害者は高齢化し、このままでは判決が確定する前に亡くなってしまう。なぜもっと早く裁判ができないのか、本当に悔しくてたまらない」(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040625-00000513-yom-soci