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2004年06月26日(土) 00時00分

仮想世界の“虚実” ネットゲームは今<上> 東京新聞

 インターネット経由で参加するオンライン・ロールプレイングゲーム(MMORPG)が若者に人気だ。ゲーム空間という仮想世界へ出入りし、他のプレーヤーと会話したり、共に戦ったりする。既存のゲームを超える広がり感が魅力だという。だが、韓国や米国ではゲームへの過度の依存やゲームに登場する道具類の売買が社会問題化している。日本の現状は−。 (飯田 克志)

 「夕方から真夜中まで、気が付くと夜が明けていることもあります」

 神奈川県に住むアキラさん(29)=仮名=は昨年八月に会社を辞めて以来、実家でMMOをして過ごしている。一日平均五、六時間。長時間やるときは食べ物や飲み物を用意しておくという。

 「ゲームで仕事をやめたわけじゃないですよ。大卒で入った店頭販売の仕事がきついし、将来の展望も持てなかったから…。仕事をやめた人が温泉に行って休むでしょ? ぼくにとってはそれがMMOだっただけ」。親には、自分の貯金から毎月五万円の生活費を払っているという。

 アキラさんを魅了するMMOとは−。

 従来のRPGは、プレーヤーは一人。騎士や魔法使いといったキャラクターになってモンスターをやっつけ、最後はボスを倒して終了、というのが基本スタイル。

 これに対しMMOは、数千人が一度に楽しめるように、運営会社のコンピューター(サーバー)のつくり出すゲームの世界がネットでつながっている。文字による会話(チャット)もできる。

 ゲームには冒険シナリオが幾つもあり、仲間と協力しないと強力なモンスターを倒せないのが特徴。一つの冒険に数時間以上かかる場合も。冒険をしなくても商売をしたり、釣りをしたり、結婚もできる。プレーヤー同士で企画して、街角で劇や漫才を披露する人もいる。

 「一緒に冒険したり話したりするうちに仲良くなる。それは現実世界と同じ。けんかもある。僕にはゲームの友人も現実の友人も違いはない。ゲームの中で毎日話す人は二十人、会えば話しをする人は百五十人います」とアキラさん。

 現実世界とは別の「もう一つの世界」。二つの世界が、ゲーム上の共同作業やチャットを通じてつながっていく−。

 「一時期MMOに夢中になった」という西村真人さん(32)は、ゲーム会社に勤めている。「ゲーム上では匿名なので、互いに変に構えず、打ち解けられる。仲良くなるとこっち(現実)のことも話す。若いママたちがファミリーレストランで話し込むような感じ。ゲーム上で知り合った相手と、実際に会うこともありますよ」と話す。

 西村さんのようなケースは少なくないという。

 「終わりがない」のがMMOの特徴の一つ。サーバーに仮想世界が構築されているので、一人のプレーヤーがゲームをやめても、仮想世界は現実世界と同じように時を刻み続ける。シナリオにも「終わり」はなく、仮想世界自体も随時プログラムが追加され、新しい世界が生み出されていく。

 ゲーム費用も月額千五百円前後と、あまり負担を感じさせない金額。ソフト購入代が要らないものも増えている。それもあってか参加者は小学生から社会人まで幅広い。ただ、男性が圧倒的に多い。

 アキラさんは言う。「現実は、いくら自分が正しくても努力してもうまくいかないことがある。でも、MMOは時間をかければ誰でもレベルが上がって仲間と目的を達成できる。僕には見知らぬアフリカの国に行くような感じなんです」

 どこか現実逃避的なニュアンスも漂う。しかし、ゲームを含めて娯楽というものは、現実の疲れを癒やすために生み出されたはず。「不安がないわけじゃない。職探しを始めたところです」とアキラさんは今の心境を語った。

 次回は、ゲームへの逃避や依存の問題を。

 MMORPG 大規模多人数オンラインロールプレイングゲームのこと。1990年代後半に米国の「ウルティマ」「エバークエスト」、韓国の「リネージュ」が各国でヒット。国内では2000年以降、外国製日本語版が出始め、02年に国内の人気ソフト「ファイナルファンタジー」のMMO版が登場。世界では数千万人、国内でも100万人以上がプレーする。今後、ブロードバンド化や通信定額制の進展で05年にはオンラインゲーム全体で国内で500万人、市場も1000億円を超えると推定(コンピュータエンターテインメント協会)。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040626/ftu_____kur_____000.shtml