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2004年06月23日(水) 01時31分

6月23日付・読売社説(2)読売新聞

 [私大破綻]「台所のチェックが必要だ」

 大学設置の際の虚偽申請が発覚し、経営難に陥っていた仙台市の学校法人「東北文化学園大学」が、民事再生法の適用を東京地裁に申請した。

 大阪の医療法人を中心としたグループから資金支援を受けて、法的整理を進める。大半の理事が辞任し、同グループから新経営陣を迎え入れた。事実上の経営譲渡である。

 二千六百人の学生と、教職員の身分は保障されることになった。閉校で行き場を失う、という最悪の事態を回避できたことは、不幸中の幸いである。

 東北文化学園大は一九九七年、当時の文部省に大学設置申請をした際、約54億円の架空寄付を計上して借金を隠し、認可を得ていた。本来なら負債率が高すぎて、とても認可は得られなかった。

 開校以来、国や仙台市から受けてきた補助金は15億円に上る。不正な受給であり、ただちに返還されねばならない。

 「二重帳簿」も作成していた。国税局の税務調査の際には会計書類を焼却するなどしていた。一連の不正には当時の理事長が深くかかわっていたという。

 文部科学省は、元理事長を補助金適正化法違反の罪で刑事告発することも検討している。不正がいつから行われていたのか、組織的関与はなかったのか。捜査当局には、破綻(はたん)の原因となった犯罪の全容を解明してもらいたい。

 当時の文部省の対応も疑問だ。

 職員の誰一人として、学校法人から提出された書類の中身を疑った者はいなかった。ある幹部は、「社会貢献に私財を投じるのが私学経営者だ、という『性善説』に立っていた」と釈明する。認可機関としての責任感がなさすぎる。

 設置申請の際、財産目録に、公認会計士による監査報告書を添付させることは最低限必要だ。文科省と大学設置・学校法人審議会が行う現地での審査にも、常時、公認会計士が加わるべきだ。

 改正私立学校法が来春施行される。理事会に学外の人間を含めることや、財産目録、監査報告書などを学生や保護者、債権者らに閲覧させることを義務づけた。チェックの目が増えるのはいい。

 これを機に、文科省は、すべての学校法人に財務状況の再点検を促し、報告させてはどうだろう。

 少子化、不況の影響もあって、私立大学の経営はどこも苦しい。定員割れの私大が三割にも上る。将来、もっと大規模な破綻騒ぎが起きるかもしれない。

 「私学の独立」は尊重しなければならない。だが、学校法人の公共的性格からして、台所事情を公開し、適切なチェックを可能にすべきではないか。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040622ig91.htm