2004年06月22日(火) 19時46分
パケット履歴開示で「クローン携帯の亡霊」は消える?(ITmediaモバイル)
携帯キャリアはパケット通信履歴の詳細を開示すべきだ、との声がある。月次の「料金総額」だけでなく、「いつ、どこで、どれだけ」パケット料金を使ったかを、ユーザー側でも正確に把握したいというわけだ。
背景には、携帯の高速化、高機能化に伴い、予想外の高額パケット代に驚くユーザーの存在がある。にわかには信じられないため、ややもすると“クローン携帯の被害に遭ったのでは”とユーザーが考えてしまいがちなことも、問題を複雑にしている。
現状、ある程度までパケット通信の詳細を教えてくれるキャリアもある。改めて、この問題とキャリアの対応状況を確認しよう。
■増え続けるパケット料金の相談
「パケット通信料に関する相談件数は、年々増えつづけている」。
独立行政法人「国民生活センター」の相談調査部、渡邊優一氏は、PIO-NETのデータを示しながらそう話す。
PIO-NETとは、「全国消費生活相談情報ネットワーク・システム」を指す。消費生活に関する情報を蓄積・活用しているデータベースで、ユーザーから寄せられた相談内容なども登録されている。
その中身は、例えば以下のようなものだ。「パケット通信料は毎月1万円台だったが、1月の請求は9万6000円だった。携帯電話会社に問い合わせたところ、毎日使っているという。家族にも使っていないか確認するように言われたが、携帯電話はいつもポケットに入れており、手放すのは寝るときだけなのでほかの者が使ったとも思えない。クローン携帯ではないか」。
国民生活センターとしては、こうした相談を受けても「キャリアに確認するしか方法がない」(渡邊氏)。そのため、5月26日には電気通信事業者協会に、「同協会に加盟している関係事業者に、パケット通信における接続先の開示を要請する」よう、求めている(国民生活センターのリリース参照)。
「これは業界全体の問題。そのため、キャリアに個別に言うのでなく“電気通信事業者協会”に要望することにした」(同氏)
もっとも、国民生活センターはあくまで消費者のための情報提供を行う組織。上記の要望には、特に法的強制力があるわけではない。結局はキャリアの対応次第ということになるが、変化のきざしもあるようだ。
■対応を進めるドコモ
この件で、比較的先進的な取り組みを見せているのがドコモだ。5月に発表したとおり、今後はiモードの通信履歴をユーザー側で確認できるよう、準備を進めている。現状でも、ユーザーからの問い合わせに応じて、個別に対応している。
「窓口に来てもらい、本人であることを確認した上で通信履歴を開示する。一定の調査期間をもらった後、メールの送信日時・相手、iモード閲覧の日時・接続先アドレスを知らせる」(ドコモ)
過去、93日前までの利用状況をさかのぼって調べることができる。もっとも、その間の履歴をすべて開示するとなるとデータ量が膨大になるため、「任意の1時間について知らせる」(ドコモ)かたちをとる。実際には“1時間”と厳密に決められているわけではなく、ユーザーの疑問を解決できるような、特定のデータを抽出してくれるようだ。
KDDIも、この件に関しては「ケースバイケース。個別に要求があれば教えている」(KDDI)。調査期間をとった上でユーザーに通知する、という形式をとっているという。将来的にユーザー側で確認できるようにするかは「現在、具体的に話せることはない」とした。
ボーダフォンは、「現在の仕様では、パケット通信の詳細開示は行えるようになっていない」とコメント。「パケットの総数で課金するのであり、ユーザーがどこにアクセスしたかは、課金に必要ない情報。(国民生活センターの要望は)ご意見としてちょうだいしたが……現時点ではやってない」
■キャリア次第で誤解は解ける?
前出の渡邊氏は、キャリアの対応によってはユーザーの疑問がある程度解決する、と強調する。
「『クローン携帯では』と疑っていたユーザーも、ログを見ると『そういえばこの日、画像データを大量にダウンロードした』と思い当たることもある」
また同氏は、携帯のパケット料金は通信時間でなく、通信の内容によって料金が変動することが、まだ十分理解されていないとも話す。そもそも、よく分かっていないから問い合わせるのに、「いや、あなたはデータ上それだけの料金を使っています」の一点張りでは、感情的にもなる——という。
「案内の封筒に、パケット通信の仕組みを説明するリーフレットを一枚、入れるだけでもいいと思う。ユーザーに対し、きちんと説明する。現状ではそれすらしていない」(同)。国民生活センターでは、電気通信事業者協会に“パケット通信の課金システムについて周知徹底を図ること”も要望している。
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