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2004年06月17日(木) 09時23分

抗がん剤ミス防止へ、がん専門薬剤師を来年度から認定読売新聞

 抗がん剤の誤投与が社会問題化している中、全国の病院に勤務する薬剤師でつくる日本病院薬剤師会(全田浩会長、約3万3000人)は2005年度から、がん専門の薬剤師の認定制度をスタートさせることを決めた。

 医師には分野ごとに学会による専門医認定制度があるが、薬剤師では初めて。同会では、その後も順次認定の分野を広げ、「薬のエキスパート」養成を進めていきたい考えだ。

 現在、国内で実施されている抗がん剤による化学療法は、約300種類に上る。次々と新薬が開発されているうえ、効果や副作用は個人差が大きく、投与には高度な知識や経験が必要とされている。

 一方で、抗がん剤の投与ミスは後を絶たず、2000年には埼玉医大で本来週1回投与すべきところを、誤って連続7日間投与された女子高校生が死亡。2001年以降も、福岡、山形などで過剰投与が起きている。埼玉医大のケースは主治医が医学書を読み間違えたのが原因とされており、同会は「薬の専門家である薬剤師がきちんとチェックしていればミスを防げた可能性がある」としている。

 同会によると、各地のがんセンターなど専門病院以外では、薬剤師は主に内服薬の調剤を担当し、点滴で静脈注射を行う抗がん剤の調剤は看護師が受け持つケースが多いという。

 こうした現状に対し、同会では、抗がん剤の薬理作用の知識や臨床経験を積み重ねた薬剤師が、自ら抗がん剤の調剤を手がけながら患者一人ひとりにマッチした投薬の方法を医師らに提案できるよう、「がん専門薬剤師」として認定する方針。がん病棟などで最低3—5年間の臨床経験があることを受験の条件として、来年度から年1回ずつ認定試験を実施する。

 同会の「がん薬物療法小委員会」委員長を務める井上忠夫・聖路加国際病院薬剤部長は「医師の処方に疑問やミスがあれば、その場で指摘できるような人材を育てたい」と話している。厚生労働省医薬食品局も「専門性の高い薬剤師が増えれば、医療全体にとって大きなプラスになる」と支援していく方針だ。

 同会では、感染症や栄養管理、精神障害の薬物療法の各分野についても、将来的に専門薬剤師の養成を目指すとしている。

 埼玉医大の抗がん剤過剰投与で長女を亡くした古館恵美子さん(49)は「『投薬ミスは薬剤師の責任』というぐらいの気持ちで医師と対等に意見を交わし、患者と向き合ってくれることを期待したい」と話している。

 ◆薬剤師=医師の処方せんに基づいて薬を調剤することを認められた国家資格。患者に対して服用法など必要な情報提供を行うことも義務づけられている。厚生労働省によると、全国の薬剤師数は22万9744人(2002年12月末現在)。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040617-00000001-yom-soci