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テレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」が埼玉県所沢市産の野菜から高濃度のダイオキシンが検出されたと報道したことを巡り、同市内の農家29人がテレビ朝日に約2600万円の損害賠償などを求めた訴訟は16日、差し戻し後控訴審の東京高裁(大藤敏裁判長)で和解が成立した。
和解条項には、テレビ朝日が農家側に1000万円の和解金を支払うことや、「不適切な説明などで、多大な迷惑をかけたことを心よりおわびする」との文言が盛り込まれ、テレビ朝日は同日夕のニュースで、農家側に謝罪し、金銭を支払う形で和解が成立したことを報じた。
問題となったのは、1999年2月1日の「ニュースステーション」(当時)での報道。民間調査会社のデータを基に、所沢産野菜から1グラム当たり最高3・80ピコ・グラム(ピコは1兆分の1)の高濃度のダイオキシンが検出されたと伝えた。テレビ朝日は8日後、「野菜」ではなく「葉っぱもの」だったと同じ番組内で報道内容を修正。その後、久米宏キャスター(当時)が「説明不足で誤解を与えた」と謝罪した。しかし、所沢産の野菜は暴落し、埼玉県の推計では20日間で4億円の損害が出た。
農家側は同年9月に提訴。1、2審は敗訴したが、最高裁は昨年10月、「番組の重要部分が真実との証明はない」と1、2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻していた。
◆「私たちの野菜を信頼してくれた消費者に深くお礼」と原告団長◆
東京高裁で午後1時半過ぎ、和解が成立した後、双方はそれぞれ記者会見に臨んだ。
東京・大手町のJAビルで会見した原告団の金子哲団長(53)は、「農家の名誉回復という当初の目的が達成されたと判断し、和解に応じた。私たちの野菜を信頼してくれた消費者に深くお礼申し上げます」との談話を固い表情で読み上げた。また、1000万円の和解金は、900万円を全島避難中の三宅島農家に、100万円を子どもたちに野菜の大切さを知ってもらう「食農教育」のため所沢市に、それぞれ寄付することを明らかにした。
原告の小高儀三郎さん(62)は会見後、「農家への非難もたくさん寄せられたが、名誉が回復できた」と目を潤ませた。
◆「迷惑をかけたのは事実」◆
一方、テレビ朝日側は東京・霞が関の司法記者クラブで会見。中井靖治報道局長は、報道がダイオキシン対策法を成立させる一因になったと最高裁判決の補足意見が指摘した点を挙げ、「放送の意義を評価した最高裁の補足意見を踏まえ、和解した。農家の皆さんにも納得していただけたと思っている」と強調したうえで、「迷惑をかけたのは事実。テレビ朝日の判断としてニュースの中でおわびする」と話した。