2004年06月15日(火) 08時26分
スパムを2年後には「封じ込める」、MSスパム対策部門のGM(ITmediaエンタープライズ)
「何よりも顧客からの要望が多いからだ」。米Microsoftでスパム(迷惑)メール対策部門を指揮するライアン・ハムリンGM(スパム対策テクノロジー&ストラテジーグループ)は、Microsoftがスパムメールに強硬な姿勢をとる理由をこう話す。
1997年からスパム対策に取り組むMicrosoftは現在、50人体制のスパム対策専任チームを組織。この一年間に、世界で80件の訴訟を行うなど、スパムに対しては厳しい姿勢で臨んでいる。同社のHotmailサービスは1日30億件のスパムを受信している状況といい、「良い意味でも悪い意味でも、スパムから多くを学んでいる」状態だ。Microsoftにとっても「スパムによって多くのコストを割かれている」とハムリンGMは言う。
スパムフィルタのSmart Screen技術や、ドメインのなりすましを防止するCallerID、コンピュテーショナルプルーフなど技術的なアプローチだけでなく、Microsoftはユーザー教育/業界連携/法規制/取締りなどといった面も大切にしているとハムリン氏。「技術はそれ単独では解決策にならない。これら5つが大切だ」と話す。
業界連携という点では、同社はAOL、Yahoo!などのライバル企業とスパム撲滅に向けた連携を行っている。またユーザー教育面では、「被害者にならないようにするための教育」をmicrosoft.comで啓蒙している。法規制の面では、昨年米国で成立したCAN‐SPAM法の制定を支持。米国内では50件の訴訟を起こすなど、実際の取締りへとつなげている。日本国内でも、スパムに関して政府と情報交換を行っている状況にある。
一方、技術面のアプローチでは、CallerIDと「Sender Policy Framework」(SPF)を統合したSenderID(送信者ID)という、電子メール送信元のドメイン偽装を防ぐ技術をIETFに提出。これまではスパムフィルタなど受信側で講じる対策が中心だったのに対し、これは送信される前にスパムを防ぐ技術といえる。
また同氏がコンピュテーショナルプルーフと呼ぶ技術は、メール送信時にハッシュアルゴリズムを利用し、その解をバイナリとして添付。大量にメールを送信する者にコストをかける仕組みだという。受信側がそれを検証することで、スパムでない可能性を高めるアプローチだ。「これはPDFに例えると分かりやすい。PDFは誰でも無償のソフトを利用することで閲覧できるが、それを作成するにはAcrobatなどの有償のソフトが必要になる」とハムリンGM。この技術は、来年以降ExchangeやOutlook、MSNに採用されていく予定があるようだ。
さて、これらの技術により、どれだけスパムが減らせるのだろうか? 「スパムの量は年々増えている。だが、受信ボックスに入ってくる量は減った。2年後には“封じ込める”状態になっているだろう」とハムリンGMは答える。
「Hotmailでは半年前に比べてスパムの量は6割減った」。自信を見せる。
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