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2004年06月12日(土) 15時03分

<阪大未公開株>教授ら被験者や学内審査委に株保有説明せず毎日新聞

 大阪大病院(大阪府吹田市)で遺伝子治療薬の臨床試験をした教授らが、同薬の商品化を目指す阪大発ベンチャー企業から未公開株を取得していた問題で、教授らが株の保有を被験者に説明せず、学内の審査委員会にも報告していなかったことが12日、分かった。世界医師会が定める倫理指針は、医学研究に携わる研究者に対し、研究に関連する企業との利害関係を審査委や被験者に説明するよう求めている。臨床試験の信頼性が揺らぐだけでなく、医師としての倫理性も問われそうだ。

 臨床試験は製薬ベンチャー「アンジェスMG」(同府豊中市)が製品化を目指す遺伝子治療薬の安全性などを調べる目的。98年、阪大教授(60)を総括責任者として学内の「遺伝子治療臨床研究審査委員会」に申請。同委員会の審査を経て国が承認し、01年6月〜02年11月の間、阪大の研究として行われた。

 この教授ら臨床試験メンバー5人が未公開株を取得したのは00年12月。しかし、同年10月には、世界医師会が医学研究の国際的倫理指針「ヘルシンキ宣言」に「研究者は資金提供や研究関連組織とのかかわりなどについて、審査委員会に報告し、被験予定者には十分な説明がなされなければならない」との修正を加えていた。前年に米国の大学で、製薬会社の大株主である研究者が責任者を務める遺伝子治療の臨床試験で被験者が死亡する事故が起きたことなどが背景にあった。

 しかし、教授らは株の保有を計22人の被験者に知らせたかどうかについて、毎日新聞の取材に「そこまでは説明していない」と話した。また、学内審査委員会によると、教授らが株の保有状況を外部の監査機関に報告したのは臨床試験開始後の01年秋ごろで、同委員会はこの外部機関を通じて初めて株保有を知ったという。

 同委員会委員長の堀正二・阪大教授は「株を取得した段階で速やかに知らせてほしかった。ただ、臨床試験の内容はその都度、厳密に審査しており、各段階での委員会の結論に影響はない」と話している。【根本毅】(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040612-00001065-mai-soci