2004年06月12日(土) 00時00分

自動車を「走る凶器」というのは、交通事故で人を殺したり傷つ… （東京新聞）

　自動車を「走る凶器」というのは、交通事故で人を殺したり傷つけた場合に使う例え。自動車に罪はなく逮捕されるのは運転者だ▼同じ刑法の業務上過失致死容疑でも、事故につながる欠陥を承知で隠蔽（いんぺい）し、文字通り「凶器」にして売った自動車メーカーの場合は、過失というより故意ではないのか▼十日逮捕された三菱自動車元社長の河添克彦容疑者ら六人は、大型自動車のクラッチ部品の欠陥を承知で、リコールの届け出をしなかった。リコール隠しの露見後も「全部調べた」とウソを重ねて事故を招いた。自動車メーカーのトップが本業の自動車販売で逮捕されるなどは前代未聞。「ものづくり日本」の信用を損ないかねない▼横浜でトラックのタイヤがはずれて母子が死傷したハブの欠陥事故では、神奈川県警は幹部逮捕まで八百五十日を要した。今回の山口県のクラッチ欠陥事故では認知からわずか二十数日で元社長逮捕にこぎ着けた。三菱側が欠陥では争わなかったためだが、リコールをすれば、会社の存続にかかわると、ヤミ改修に走った元社長らの責任をより重く見た結果だ▼砂漠の耐久レース「パリ・ダカールラリー」では、パジェロで過去九回総合優勝。技術には定評のあった三菱自動車。今回の醜態を誰が予想したろう。パジェロは国内販売は不振だが、中東やアフリカでは今も人気車種だ▼東京都、宮城県をはじめ、三菱車の公用車導入を控える自治体が相次いでいる。五月の販売実績が対前年比５６％減と大幅ダウンした。六月、七月の販売レースを持ちこたえられるか。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20040612/col_____hissen__000.shtml