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■悪質な業者横行
同協会は、全国の販売店の二割にあたる約二千五百店が加盟。資格制度の創設で「プロの販売士」の養成をめざす。
販売士は、動物の生態を熟知し、適切な飼育管理ができるほか、購入者に家族の一員として「終生飼養」する心構えなどを理解させる能力も求められる。十一月にも東京、大阪、名古屋などで試験のための講習会と実技研修がスタートする。
「一部の悪徳業者のせいでペット業界のイメージがおとしめられている。この制度で業界の(モラル意識の)底上げを図り、健全化につなげたい」と末松会長は期待を込める。
ペット販売など動物取扱業は、二〇〇〇年十二月の同法施行で都道府県への届け出制となった。東京都や愛知県などのように条例でより厳しい登録制を敷いているところもある。
知事は改善勧告や改善命令を出すことができる。だが、実際に改善命令が出されるのは例年、数件にとどまる。
業界は空前のペットブームで一兆円市場といわれ、業者の入れ替わりが激しい。露天販売など“ヤミ営業”から、愛犬家から転じた「にわかブリーダー(繁殖販売業者)」などもおり、トラブルは増える一方だ。
国内では、犬猫は生まれてまもないほど高く売れるため、生後一−二カ月から取引される。だが犬の場合、二カ月未満では、ジステンパーやパルボウイルス感染症などの予防接種を終えておらず、環境の変化に伴うストレスから衰弱死することも少なくない。
通販の場合は、なんの知識もない運送業者が仲介することもあって、客との間で「到着後すぐ死んだ」「すでに病気だった」といったトラブルが絶えず、「写真と印象が違う」とクーリングオフで返送中に息絶えるケースもあるという。
協会は昨年、離乳前の犬猫の販売を自粛し、通販を禁止するガイドラインを発表。「店を持たない者への不当な圧力だ」との抗議も受けたが、末松会長は「小さな命を特産品やブランド品のように扱うことは許されない」とはねつけた。
欧米では、衝動買いの防止のため展示販売を禁止し、三カ月未満は販売させないところもある。
「動物社会のルールを学び、良い性格を形成するためにも生後三カ月は母親と一緒に置く必要があり、いずれは欧米水準まで業界のハードルをあげたい」と末松会長。
東京都家庭動物愛護協会副会長で獣医師の宮田勝重さんは「おそらく年間五十万匹の子犬が市場に出され、流通段階で十万匹は死んでいる」と指摘、「業界団体が自らルールをつくり、職域を守ろうという姿勢は評価できる」と話す。
環境省は現在、専門家の検討会をつくり、登録制や許可制の導入などを検討している。
日本動物福祉協会調査員で獣医師の山口千津子さんは、この検討会のメンバーだが、「罰金刑をなんとも思わない輩(やから)が横行し、動物の生態や快適環境を知らない店員が多すぎる」と憤る。
山口さんは、小売業協会の資格制度は歓迎しているが、「八割近くの未加盟店は野放しのままなので、法律を改正して営業停止や営業許可取り消しができるようにしてほしい」と訴える。
末松会長も「業界の発展のため規制強化が必要」との立場で、「率先して規制に耐えるよう努力し、人とペットの共生社会の実現をめざしたい」と意欲を燃やしている。
<メモ>
国内の飼育・相談件数 ペットフード工業会の昨年度の調査では、国内の犬の飼育数は過去最高の1113万7千匹、猫は696万3千匹。
国民生活センターによると、昨年度のペット販売をめぐる相談は、約1500件で5年前の1.5倍。8割は店頭販売に関する相談だが、インターネットなどを使った通信販売も2002年度は前年度の2倍の170件で、昨年度も215件と増加が目立つ。
文・阿部博行
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