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2004年06月09日(水) 15時56分

無線LANの犯罪悪用確認 迫られる安全対策朝日新聞

 ケーブルを使わないでもインターネットの高速通信ができ、普及が急速に進む無線LAN(ローカルエリア・ネットワーク)が犯罪に悪用されたことが、警視庁が立件した事件の捜査で明らかになった。電波で情報をやり取りする無線LANについてはこれまで、ネット回線を無断利用される危険性が指摘されてきた。しかし、犯罪行為が裏付けられたことはほとんどなく、今後は一層の安全対策が迫られそうだ。

 東京都調布市の私立大学職員(47)は5月、不正アクセス禁止法違反容疑で警視庁に逮捕された。勤務先の大学に嫌がらせをするため、昨年10〜12月に100回以上、大学のサーバーへの侵入を繰り返した疑いが持たれている。

 調べたところ、うち1回は同市内の路上に止めた自分の車内で、無線LAN用のアダプターを付けたパソコンを操作し、数十メートル離れた会社役員(33)の自宅にある無線LANの送受信装置を通じて無断でネットに接続、大学のサーバーに不正アクセスしていた。

 職員が会社役員になりすまして接続した形になり、侵入された大学のサーバーには無断利用された役員名義での接続履歴しか残らなかった。職員は「実際に入れるかどうか試してみた」と供述している。

 この事件では、自宅や勤務先のパソコンからも侵入を繰り返したため職員が特定された。捜査幹部は「無線LANの無断利用だけだと、特定するのは難しい」と打ち明ける。

 無線LANの送受信装置は、機種によっては電波が100メートル以上飛ぶとされる。第三者の利用を防ぐ安全対策を取っていないと、装置の所有者に知られずにネットに自由に接続できる。また同一の装置を使って複数のパソコンで情報がやりとりできるため、パソコン内に保存された情報を盗み見られる恐れもある。

 実際、02年末には気象庁や経済産業省で無線LANで結ばれたパソコンの情報を、部外者がのぞき見できるとして、対策を迫られた。

 同省情報セキュリティ政策室も「無線LANを悪用されたという被害相談が何件も寄せられている」と話す。

 こうした状況を踏まえ、社団法人「電子情報技術産業協会」は4月、無線LANの安全対策ガイドラインを改定。「送受信装置の利用者識別機能を設定する」「やりとりする情報を暗号化する」といった対策の徹底を利用者に呼びかけた。無線LANメーカーにも、より簡単に安全対策を講じられるような製品の生産を求めた。

 だが一部の最新機種を除くと、安全対策を講じるには一定の知識と手間がかかる。同協会は「説明書に設定方法をきちんと書いていない場合もあり、対策は十分とはいえない」と指摘する。メーカー側も「最後は利用者に自衛してもらうよりない」と強調している。

    ◇

 〈無線LAN〉 LANは複数のパソコンで、一つのインターネット回線やパソコン内に保存された情報を共有するために使われる。無線LANは電波などで情報をやりとりするのでパソコンと送受信装置を結ぶケーブルがいらない。国内では99年ごろに登場。高速通信が可能で安価な装置が登場し、企業だけでなく家庭でも急速に普及している。コードレス電話と同じように、電波の届く範囲ならパソコンをどこに動かしてもネットに接続できる。無料で無線LANを使える飲食店なども急増している。(06/09 15:56)

http://www.asahi.com/national/update/0609/022.html