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2004年06月08日(火) 00時00分

ネット教育のあり方 林・山大教授に聞く朝日新聞・

  
 使用モラルの学習必要
  
  長崎県佐世保市で小学6年の女児が死亡した事件では、小学生によるインターネット利用が注目を集めている。総合学習などでパソコンの使い方を学ぶ児童らに対し、ネット教育はどうあるべきなのか。情報教育が専門の林徳治・山口大教育学部教授(52)=写真=に話を聞いた。(柳谷政人)

  −−ネット上の会話が問題になりました。

  対面会話や電話では、しぐさや表情、会話の間(ま)や声の出し方などの「非言語」があり、会話の理解を助ける。しかしメールやチャットにはそれがないので、大人でも理解にズレが出る。

  手紙は文字情報だけだが、書き直したり出すのをやめたり、投函(とうかん)するまでに色々振り返る時間がある。メールはリアルタイムで、大抵は文章を見直さない。感情のままに出すと、相手を傷つけることになる。

  −−子どものネット利用も増えています。

  子どもは自分で使い方を学べるが、使うときのモラルは学べない。

  それはほとんどの子どもが、友人同士の閉ざされた空間でしかコミュニケーションをしないからだ。ホームページを作っても、閲覧や書き込みは友人など限定された人のみ。プライベートな域を出ないため自分の言いたいことを出すだけで、発信した文章の影響の大きさや、情報を扱う上での責任は学習できない。

  −−今回の事件が与える影響は。

  一番危惧(きぐ)するのは、「小学生はパソコンを使わず、外で遊ぶべきだ」と極論になること。生活に根ざしたITを、早い段階で学ぶことには意義がある。「教育上良くない」とやめると、開かれた社会から子どもが取り残される。

  佐世保の事件でもそうだが、どうして事件が起こったのか理解不能になると、すぐに「心の病」に転嫁される。学校や地域でできることはある。

  −−現場のネット教育はどうすべきですか。

  学校では、子どもが自分で学べないことを教えるべきだ。それは、こういうことはしてはいけないという「経験」だ。

  大人も加わったパブリックな場をつくり、そこに参加してメールやチャットで交流する。そうすれば子どもも、出す前に「これで良いのか」と考え直す時間を持つ。そこで学んだモラルは、他のネット交流で生かされるはずだ。

  子どものネット利用は学校に限らない。この問題は学校、保護者、行政が連携し、対策を練ることが必要だろう。

  教育現場のネット状況 県教委指導課によると、県内の公立小学校すべてに教育用パソコンがあり、児童はネットを使うことができる。小学校ではITに慣れ親しむことに重点を置き、総合学習での利用が多い。00年3月には県情報教育指針を策定し、ネット利用における問題点を例示。県のHPでも公開している。

(6/8)

http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news01.asp?kiji=4148