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2004年06月08日(火) 19時36分

タワーレコードとHMVジャパン、洋楽輸入盤の販売継続に関する共同声明impress Watch

写真:インプレス    タワーレコードとHMVジャパンは、6月3日に成立した「著作権法の一部を改正する法律案」に関する共同声明を発表した。声明では両社が今後、洋楽輸入盤の輸入規制が起こらないよう働きかけていくとともに、洋楽輸入盤を守るために最大限の努力をしていくことが宣言されている。

 この法律案は、アジアなどでライセンス生産された安価な邦楽CDが日本国内へ環流して販売される、いわゆる環流CDを防止するために成立したもの。ただし、この法律では海外からの輸入CDについても法律上は規制が可能であり、輸入CDが今後日本国内で購入できなくなるのでは、という疑問が生まれていた。

 タワーレコードとHMVジャパンでは今回の法改正について、環流防止措置が重要であると同時に「著作権法の一部を改正するという方法では、洋楽ファンの権利を奪いかねない」という考えから、関係官庁、経団連、日本レコード協会へ意見を述べるといった活動を展開。さらに音楽マーケットではライバル企業ではある両社だが、「洋楽を愛する人々の聴く権利を脅かすような動き、どのような状況であっても回避しなければならない」という目的のもと、両社の連携による一連の活動を推進していくに至ったという。

 2004年2月には「著作権法の一部を改正する法律案」の概要が発表され、HMVジャパンのポール・デゼルスキー代表取締役社長、タワーレコードの野村佳史執行役員が国会議員への陳情を繰り返すとともに、文化庁との協議、日本レコード協会への消費者への不安を払拭するための声明文発表の要請を行なった。5月7日には日本レコード協会、ユニバーサル ミュージック、東芝EMI、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナーミュージック・ジャパン、BMGファンハウス、日本レコード商業組合が、「今後も各社の洋楽輸入CDを継続して提供する」との文章による表明を得るに至り、この内容が日本レコード協会のWebサイトに掲載された。

 6月3日には、この法律案が衆議院文部科学委員会にて全会一致で可決した。ただしこの法律には、「洋楽の並行輸入が阻害された時には適切な対策を講じる」といった13項目における付帯決議が付けられた。また、音楽評論家の高橋健太郎氏、HMVジャパンのポール・デゼルスキー代表取締役社長は法律案の採決前日行なわれた参考人招致で、洋楽ファンの聞く権利を脅かすことのない法的担保の必要を要請したという。

 両社は今後も力を合わせてこの問題にあたっていく方針。その一環として両社による共同声明を発表した上で、今回の記者会見が開催された。

 共同声明は「洋楽輸入盤CDの自由な流通が守られ、音楽を愛するすべての人々がもつ『好きな音楽を自由に選び、自由に聴く権利』が侵害されることがないように」との趣旨のもと、以下の3つの宣言が挙げられている。

一、「著作権法の一部を改正する法律案」の成立、施行によって、洋楽輸入盤CDの輸入規制が起こらないよう、今後も文化庁や日本レコード協会などの関係省庁・団体に対して働きかけを行ない、その動きを厳しく注視していくこと

一、「著作権法の一部を改正する法律案」が邦楽の著作権者を守るという本来の目的に沿って運用され、政府および関係者が同法案の「欧米諸国からの洋楽の並行輸入等が阻害されるなど消費者の利益が侵害される事態が生じた場合には、適切な対策を講じる」等の付帯決議を遵守するよう働きかけていくこと

一、万一、洋楽輸入盤規制により消費者に不利益が生じるような可能性が発生した場合には、ただちに洋楽輸入盤の自由な流通を守るために必要な行動をとること

■ 今後も洋楽輸入盤の販売は継続

 タワーレコードの森脇明夫社長は今回の法改正について「本来の目的は環流CDの防止だが、法的には輸入CDの規制も可能な点が懸念されていたおり、法律案の目的をはっきりさせ、輸入盤は対象外とするために一連の活動を続けてきた」と説明した。また、「一般の方々には見えにくい内容だったにも関わらず、輸入盤CDが高い関心と支持を集めていることを認識できた」とコメント。「輸入盤CDは今回の法改正の対象としないとの確認を取れており、今後も提供し続けることができると確信している」と語った。

 声明で述べられた「適正な価格で購入できる環境」の具体的な内容を問われると森脇氏は「非常に難しい問題。コストに為替相場が絡んでくる上に、国内盤に対してどれだけ安価であればいいかという問題がある」とした上で、「少なくとも現状店頭で販売している価格が適正ではないか。今回の法改正でその価格は高くも安くもならない」と、今後も現状の価格を維持していくとした。

 HMVジャパンのポール・デゼルスキー代表取締役社長は、「法案の話を聞いた時、環流措置対策そのものは賛同するが、残念ながら法案上は著作権法上で洋楽と邦楽を区別出来ない点が懸念であった」とコメント。環流CDを防ぐ、輸入盤を守るという双方の目的を達成するために水面下で活動を行なってきたと説明した。

 デゼルスキー社長は続けて「法案には参議院・衆議院ともに付帯決議が付いたこと、日本レコード協会と国内のメジャーレーベルからは『今回の法律は輸入盤に適用しない』との言質が取れたこと、この2つが非常に重要な点だ」と指摘。「今回の法改正がいかに消費者の関心を集めるものであり、法案が万が一にも濫用される場合には多くの消費者が悲しむということが日本レコード協会、メジャーレーベルに認識してもらえた」と述べ、「これからも変わらず幅広い品揃えで今まで通りのビジネス展開ができると自信を持って申し上げられる」との意気込みを示した。

■ 今後の展開を厳しく注視することが最も重要

 音楽評論家の高橋健太郎氏は「2社が水面下で精力的に活動してきたことには敬意を表する。法案に付帯決議がついたことは2社の力が大きい」とコメント。「5月11日には音楽関係者268名を集めて輸入CD規制に反対する共同声明を発表したが、実はこれほど短期間にこれほど多くの声が集まるとは思っていなかった。さらにインターネットを通じた一般の方への反対の声の広がりは想像をはるかに超えるもので、こういうネットワークが音楽ファンにできたことはかつてないと思う。今回できあがったネットワークを通じて、法案が環流防止以外へ広がることを防げたらと考えている」とコメントした。

 高橋氏は「2社の声明にもあったが、今後の動きを厳しく注視していくことがこれから一番重要なことだ」と指摘。タワーレコードやHMVジャパンだけでなく、音楽関係者や消費者による監視体制が大きな抑止力になるとした。高橋氏は「今回作り上げたネットワークを再構築して、より幅広く連携したネットワークを作りたい。たった1枚でも輸入盤が入ってこない状況にいち早く対応し、抑止力となるためのネットワークとして機能していきたい」と今後の展開を語るとともに、「今回の法律はグレーゾーンが多く、運用次第の法律になっているため、運用のガイドラインを一般にわかりやすく、インターネットで誰でも見られるような運用を文化庁に求めたい」との要求を示した。

 高橋氏はタワーレコードとHMVジャパンが同日に発表した声明について「タワーレコードの声明には『環流防止という法案の趣旨には賛同する』という内容が含まれており、この内容が一部のニュースサイトでセンセーショナルに書き立てられたため、タワーレコードの不買運動が起きかねない状況が発生していた」とコメント。「ターゲットが明確でなければ不買効果はないと思う」ととした上で、「良い音楽はどういう経路で入ってきても良い音楽。音楽の入手経路だけで良い音楽と思わなくなるなら、それは音楽ファンをやめたことになるだろう。音楽ファンであることは不買運動することより大事で、だから私に不買運動はありえない」と語った。

■ アジア圏からの輸入盤は運用面での検討が必要
 発表会場では日本レコード協会から「音楽ファンの皆様へ」と題したメッセージも紹介された。メッセージは依田巽会長の名で「この『音楽レコードの環流防止措置』により欧米諸国で製造・販売されている洋楽レコードの日本への輸入が禁止されることはないことを改めてここに確認する」としている。

 なお、アジア圏のアーティストによる音楽CDは、環流防止措置の目的から考えれば欧米のCDと同等に扱われるものの、税関などの運用面では細則が決まっていないのが現状だという。タワーレコードの野村佳史執行役員は「アジア圏の音楽CDが輸入されないという懸念を払拭するためにも、文化庁や日本レコード協会と今後検討を進め、情報を確認していく必要がある」とした。

■ URL

  タワーレコード

  http://www.towerrecords.co.jp/

  HMVジャパン

  http://www.hmv.co.jp/

  日本の洋楽ファンの皆様へ(日本レコード協会)

  http://www.riaj.or.jp/whatsnew/w040507.html

  私たち音楽関係者は、著作権法改定による輸入CD規制に反対します

  http://copyrights.livedoor.biz/

(甲斐祐樹)

2004/06/08 17:50(impress Watch)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040608-00000022-imp-sci