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2004年06月03日(木) 17時37分

国交省にリコール調査官 メーカーOBで今秋試験運用朝日新聞

 三菱自動車で相次いだリコール(無償回収・修理)隠し事件を受け、国土交通省は来年度、「リコール調査官」制度を創設することを決めた。自動車メーカー技術職OBの10人を任命し、車の構造的な欠陥が疑われる重大事故の場合は現場にも出動する。メーカーの原因究明作業を監視するとともに、独自の実験で原因を分析し、調査結果をもとに国交省がメーカーにリコールを勧告する。将来は態勢を増強し、自動車版の「事故調査委員会」を目指す。今秋にも数人を任命して試験運用する方針だ。

 航空機や鉄道事故をめぐっては、国交省航空・鉄道事故調査委員会が対処し、パイロットや整備士らの調査官が事故原因を分析・調査。その結果をもとに学識経験者らの調査委員が、再発防止策を盛り込んだ事故調査報告書にまとめる。

 これに対し、リコール関連では、国交省のリコール対策室の7人と、各地の運輸局のリコール専門官13人の計20人が、監査の際などに入手した事故や不具合の情報を分析している。いずれも自動車検査場での検査や整備の経験はあるが、「メーカーの社員と比べると、技術も知識も歯が立たない」(国交省幹部)という。

 このため、同省には法律上はリコールを勧告する権限があるが、事実上は不可能だった。新たな制度は、勧告権の強化を大きな眼目としている。

 リコール調査官は事故調査委の調査官に当たる。自動車メーカーの開発や生産、品質管理といった現場で働いていた技術者が対象で、定年退職者の中から任命する。国交省が所管する独立行政法人「交通安全環境研究所」(東京都調布市)に常駐し、道路運送車両法が定める国交省の職務を一部委嘱する形をとり、守秘義務も課される。

 「エンジン」「ハンドル」「材質」「電子機器」「走行」といった専門分野ごとに1人ずつの計5人に加え、トラックやバスなどの「大型車」、乗用車などの「小型車」にも担当者を置く。

 調査官が調査する交通事故は、構造的な欠陥を疑わせるものが対象。スピード違反や飲酒運転といった運転操作が原因と明白に分かるものは除外される。「原因が簡単には分からない死亡事故は、できる限り調査対象にしたい」(国交省幹部)としている。

 事故直後に現場に赴いて調査官が事故車両を検証。同様の事故が多発していないかを調べ、メーカーに原因究明を指示する必要があるかを検討する。メーカーの究明作業にも立ち会い、実験が適正に行われているか、不正や見落としがないかを監視する。一方で、調査官は独自に実車を使った耐久試験なども行って原因究明を進める。

 こうして入手した情報や調査結果を調査委員が総合的に判断し、構造上の欠陥の疑いが強まれば、国交省がメーカーにリコールを勧告する。三菱の事件を受け、すでに国交省はメーカーに重大な不具合情報の定期的な報告などを義務づけることを決めており、こうした情報もリコール調査官が分析する。

 また、各地の警察から地方運輸局や運輸支局に、構造的な欠陥が疑われる事故について、情報が提供される態勢を求めて、警察庁と近く協議を始める。

 国交省はリコール調査官を創設後5年をめどに増強し、リコールにつながりかねない不具合や事故を積極的に調査・分析する態勢を目指す。

(06/03 17:37)

http://www.asahi.com/national/update/0603/027.html