2004年06月03日(木) 19時36分
改正著作権法、来年1月施行へ。残された手段は……(ITmediaライフスタイル)
「委員長報告の通り可決」
第159回 国会衆議院本会議で、著作権法の一部を改正する法律案が賛成多数で可決された。
この著作権法改正問題、再三に渡って取り上げてきたが、複雑な問題であることは間違いない。著作権法で著作者の権利を保護することは大切だが、その一方で、その保護が過剰に過ぎると、かえって著作物の利用を停滞させることにつながりかねないからだ。
今回の法案の趣旨は「邦楽CDについて還流防止措置を設けるべきだ」というもので、この趣旨自体には賛成の意見が多い(異議を唱える意見ももちろんある)。
しかし、具体的な方法として示された今回の法案には疑問を禁じ得ない。文部科学大臣および文化庁は、これまで通りの流通が行われると主張を繰り返すが、再三指摘があったように法案は洋楽邦楽を問わずに規制を行いうるものであるし、「税関当局と連携を計り、法案趣旨に添った運用を行っていく」という文化庁の説明も“法的な保証”はなく、目標を述べているに過ぎないからだ。
衆議院文部科学委員会で行われた質疑の中では、根拠として文化庁の挙げた数値が自身の手によって精査されたものではないことが明らかになったほか、どれだけの「かかる不利益」があった場合に規制対象になるかの具体的な数値が大臣・文化庁側から示されることはなく、「法案趣旨に添った運用を行う」の一点張りであった。これでは不安が払拭されたとは言い難いだろう。
付帯決議には13の項目があり、「欧米諸国からの洋楽の並行輸入等が阻害されるなど、消費者の利益が侵害される事態が生じた場合には還流防止措置の見直しを含め、適切な対応策を講じること」という一文のほか、「CDに日本販売禁止と明記すること」「還流防止措置の期間を定めるにあたっては適時検討を加えること」という項目がもりこまれている。しかし、付帯決議にも法的拘束力はなく、答弁と同じく運用時の努力目標に過ぎない。ここに書いてあるからといって安心できるわけではないのだ。
そこで重要になるのが消費者の監視だろう。規制に反対する署名は5万7000件以上が集まり、文部科学委員会のインターネット中継は、初日だけでも通常の4倍以上のアクセスがあったそうだ。また、文部科学委員会の質疑者からは「多くのメールやFAX、手紙が寄せられており…」という発言が多く聞かれた。
改正法案が施行されたからといって、すぐに輸入CDの状況の変化が起こるとは考えにくい。しかし、将来に渡っては分からない。この関心を継続し、不適切な変化が生じた場合には消費者自らがきちんと行動を起こすこと——輸入音楽CDによってもたらされる文化を守り、消費者の利益を損なわないようにするためには、残された手段はもはやそれしかないだろう。
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