2004年06月02日(水) 15時08分
交換日記がわりのチャット、小6女児死亡事件の背景に(読売新聞)
説明会を終えた保護者と、給食の準備にかかる児童たち(長崎県佐世保市の大久保小で)
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長崎県佐世保市の大久保小学校で、6年生の御手洗怜美(みたらい・さとみ)さん(12)が、クラスメートの女児(11)にナイフで切り付けられ死亡した事件の背景に、インターネット上の書き込みを巡るトラブルが浮上した。
パソコンや高速回線の普及で、IT(情報技術)化が進む教育現場。中でも、ネット上のチャット(会話)は、子どもたちの間でも急速に広がっている。ネットを通じた友達づきあいをしていたという被害者と加害者の間に何があったのか——。事件は、教育関係者にも大きな課題を突き付けている。
「以前、女の子の間で盛んだった交換日記が、今は、携帯電話やパソコンに移行している」
子どもたちのメディア事情に詳しい稲増龍夫・法政大教授(メディア論)はそう説明した上で、「一般論としては、ネット上での言葉のやりとりによってコミュニケーションは密になるが、電話なら相手のニュアンスをくみ取りながら会話するのに、ネットの場合、言い過ぎることはあるかもしれない」と便利さの裏に潜む負の側面を指摘する。
多くの家庭にパソコンが普及したことなどから、チャット仲間と自宅で長時間、会話を楽しむ子どもが増えた。
しかし、相手の顔が直接見えないことで、トラブルになる場合も少なくない。
「もっとも、子どもたちは絵文字を入れて、言い過ぎを修正したりするのが普通で、ネット上の書き込みが引き金となって殺害するまでの感情に発展するとは考えがたい」
稲増教授は、事件の「動機」に首をひねった。
教育関連出版会社「学研」(東京都大田区)によると、同社が小中学生向けに運営しているホームページ上でも、子ども同士のチャットや書き込みを巡り、言い争いになることもある。
このため同社では、「乱暴な言葉は使わない」「気分の悪くなるようなことは書かない」などの規則を設け、1日に4、5回、このコーナーを点検している。
同社の担当者は、「ネット上のやり取りだけで相手を刺すような事件まで起きるとは想定していなかった」と話し、今後、ホームページの運営方法の見直しも検討するという。
IT教育に詳しい水越敏行・大阪大名誉教授(教育メディア論)は、「IT教育は多くの小学校で採り入れられているが、熱心な学校とそうでない学校の格差が大きい。携帯電話の普及で、親や教師の目が届かないメールのやり取りも可能になった今、ネット上のコミュニケーションについて専門に教える授業が必要ではないか」と提案している。(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040602-00000107-yom-soci