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2004年05月31日(月) 17時52分

ブルセラ、スカウト行為規制へ 健全育成条例、都が強化朝日新聞

 東京都の青少年健全育成条例の改正に伴い、18歳未満の少年少女を性風俗店で働かせたり、ホストクラブの客にしたりするために誘う「スカウト行為」が、6月1日から規制される。主に少女が犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、その芽を摘もうという全国初の取り組みだ。違反すれば30万円以下の罰金が科せられる。だが、条例適用には困難が予想され、「実効性は未知数」という専門家もいる。

 5月最後の週末。渋谷のセンター街近くでは、スカウト役の男性たちが道行く女性に声をかけていた。アルバイトだという大学生(20)は「規制を控え、女の子の年齢を気にしている。リスクは負いたくない」と話した。

 警視庁によると、スカウトは池袋が100人以上、新宿、渋谷がいずれも50〜150人。各スカウトは1日あたり数百人の女性に声をかけ、携帯電話の番号を名刺に書いて配ったり、口頭で教えたりする。

 その場ではしつこく誘わず、後日電話をかけてきた女性にしぼって性風俗店などに紹介することが多い。女性が働くことになれば紹介先から金をもらう。警視庁が4月に逮捕したスカウトは、紹介した女性の店での売り上げの1割を毎月受け取るなどして、「月50万円の収入があった」と供述した。

 渋谷に来ていた埼玉県の女子高校生(16)は「高校生だと言っても『年がばれなきゃ大丈夫。ヘルスで働かない?』ってよく誘われる」。

 警視庁は6月1日以降、スカウトが少女を性風俗業の接客役やホストクラブの客として誘ったことを警察官が確認すれば、警告書を渡す。警告を受けたスカウトが再び同じ業種に勧誘した場合には逮捕する方針だ。

 ただ、キャバクラなどの飲食店やタレント養成を目的とした勧誘は対象外で、内容を特定するには誘われた少女らが事情聴取に協力してくれるかどうかにかかっている。

 少女たちの中には大人びた格好の子もおり、警察官が外見だけで年齢を判断するのも容易ではない。新宿・歌舞伎町のスカウト(22)も「18歳未満かどうかは声をかけてみないと分からない。それだけで取り締まりをされないだろうか」と不安がる。

 都青少年問題協議会の委員を務めた東京学芸大の山田昌弘教授(社会学)は「少女が18歳以上だと言い張った事実があれば、誘った側は言い訳できる。条文ではその場合の適用方法があいまいだ。『捕まるのは運が悪い』となれば順法意識を薄れさせかねない」と指摘する。

 一方、生活安全部の幹部は条例適用の難しさを認めたうえで、「規制でスカウト行為の横行に歯止めがかかればいい」と意義を強調している。

 少女が使用した下着などを売る、いわゆる「ブルセラショップ」を念頭に、18歳未満の下着を買う行為も規制される。しかし、規制では追いつかなくなっている実態もある。

 渋谷署は昨年、区内のブルセラショップなどを古物営業法違反(無許可営業)などで一斉摘発。だが、「摘発してもビルを移転し、営業を再開している店もあり、なかなか実態がつかめない」(同署)のが現実だ。

 最近は少女が、その場で脱いだ下着を売る「ナマセラショップ」もある。

 渋谷のセンター街近くの雑居ビルの一室。客が気に入った女の子の番号を言うと、指名された子は個室へ移動。マジックミラー越しに女の子が下着を脱ぐ姿が見える仕組みになっている。ソックス2000円、ブラジャー8000円……。業者によると、女の子には下着が売れると歩合が上乗せされる。

 都内の高校に通う少女(18)は昨年、ブルセラショップに下着10枚を持ち込んだが、「1000円しかくれなかった。割が悪いので友達とナマセラに流れた」という。

 渋谷で3店舗のブルセラショップを経営する男性(32)によると、携帯の出会い系サイトがはやりだした2〜3年前から、多くの女の子は自分でネットのオークションに出品し、直接、客に高い値段で下着を売るようになった。直接、手渡しをしているので、援助交際に発展し、犯罪に巻き込まれる危険性がより高くなっているという。

 捜査当局は「ネットでの直接販売の取り締まりは女の子の協力がないと難しい」という。

    ◇

 東京都の改正青少年健全育成条例のポイント 青少年から着用済みの下着を買う▽性風俗業の接客役かホストクラブの客として勧誘する▽午後11時以降に保護者の同意を得ずに16歳未満を連れ回す——といった行為が禁じられる。違反は50万円以下か30万円以下の罰金。7月からは18歳未満を漫画喫茶やインターネットカフェに深夜に立ち入らせる行為も禁じられ、店の責任者が30万円以下の罰金となる。(05/31 17:52)

http://www.asahi.com/national/update/0531/028.html