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2004年05月31日(月) 23時57分

「天才」の真意はどこに? ウィニー著作権法違反事件朝日新聞

 ファイル交換ソフトWinny(ウィニー)による著作権法違反事件で、幇助(ほうじょ)罪で起訴された東大大学院助手の金子勇容疑者(33)は、インターネット社会では「天才」とあがめられていた。その手でつくられたソフトはネット社会に何をもたらすのか。ネット上を巻き込んだ論議は司法の場に移った。

 金子助手は10歳のころからパソコンソフトの作製を手がけたという。インターネットの掲示板で「暇なんでファイル共有ソフトを作ってみるわ」とウィニーの開発を宣言し、約1カ月で完成させた。

 掲示板に書き込んだ順番から「47氏」と呼ばれ、「天才」「神」などと称賛された。京都府警幹部も「一種の天才」と認めるほどだ。

 ウィニーを配信していたホームページでは「従来のデジタルコンテンツビジネスモデルはすでに時代遅れ」と指摘、「デジタル証券システム」といった試論も展開していた。

 「今回は幇助の範囲をとても広く解釈している。これではいつでもソフトウエア技術者を逮捕できるようになる」

 金子助手の知人でソフトウエア開発会社社長新井俊一さん(26)はこう語る。逮捕後、仲間のソフトウエア技術者らと「金子勇氏を支援する会」を結成した。2週間余りで約1500万円の支援金が集まり、応援メールも200通近く寄せられた。新井さんは「ソフトウエアを作っても、なかなか売れない。著作権を守ってもらいたいという気持ちは金子助手も持っていたはず」と話す。

 府警は、01年11月には別のファイル交換ソフト「WinMX」の利用者を逮捕。ウィニーは無償配布され始めた当時から目をつけていた。

 府警は、金子助手が著作権侵害の現状の深刻さを分かった上で、ウィニーによってさらに広げようとしており悪質として逮捕に踏み切った。

 だが、府警には30日現在、174件のメールが寄せられ、大半が逮捕に批判的な意見だったという。幹部は「開発=逮捕と誤解した意見が多い。ウィニーによる捜査関係書類流出の仕返しと誤解する声もある」といら立ちを隠さない。

 金子助手の逮捕後、「違法なファイルはやり取りしなくなった」(会社員・31歳)という利用者もいる。だが、ネット上では金子助手に代わって一部の利用者がウィニーの改良を続けている。

 99年10月に創刊され、ウィニーの紹介もしてきた上中級者向け雑誌「ネットランナー」発行元のソフトバンクパブリッシング広報は「ウィニー自体は違法ではないと考えるが、著作権法違反が広がっていると認識しているので、違法だと疑われるファイルのやり取りは掲載せず、使用方法の紹介にとどめてきた。今後も倫理的な編集方針を守る」としている。

(05/31 23:57)

http://www.asahi.com/national/update/0531/039.html