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2004年05月30日(日) 00時00分

裏求人サイト暗躍 ネット詐欺の実態 東京新聞

 「おれおれ詐欺」が再び急増している。息子や孫を装って口座に振り込ませる単純な手口だが、犯行を容易にしているのは、ネットで入手できる預金口座などの「詐欺ツール」だ。こうした“道具”は「架空請求詐欺」でも応用が可能だ。一方で、ネット上での情報流出も相次いでいる。ネットを利用した「詐欺」の実態とは。

 「リストあります。約千枚入荷しました」

 「携帯、口座役者募集しています」

 “裏仕事”“裏求人”を名乗る掲示板には、こうした情報がひっきりなしに書き込まれている。

 「携帯、口座役者とは、犯行に使うための携帯電話の契約や預金口座を作る際に、窓口で“本人”になりすます担当のことです」

 インターネットジャーナリストの森一矢氏が説明する。「最近では、免許証の偽造などがとても容易になっている。写真をすり替えて偽造した免許証を元に、“本人”を演じるだけでいい」

 こうした“裏求人サイト”では、預金口座がじかに売買もされている。今年三月には、「裏ハローワーク」と称するサイトで、架空の免許証や口座などを「おれおれ詐欺セット」として販売していたグループが逮捕された。

 森氏は「卸業者が購入する際には約五千円くらい。業者が売るときは約二万円くらいが相場で、若年層が後先を深く考えずに、小遣い稼ぎ程度の気持ちで、自分の預金口座などを売っている」と補足する。

 警察庁によると、今年一月から四月にかけて認知した詐欺の被害は、全国で八千六百十件で、昨年の同じ時期と比べて53・7%も増加している。このうち「おれおれ詐欺」は三千九百十二件に上る。ちなみに犯行に使われた通帳などを金融機関からだまし取ったとする“口座役者”による通帳詐欺事件は三百二十九件、二百十八人が摘発されている。

■情報流出で架空請求増

 ほかにも「架空請求詐欺」や「ネットオークション詐欺」なども増えているという。

 ネット犯罪に詳しい岡村久道弁護士は「ネットを利用した詐欺の増加は、情報漏えいの増加と連動している」と指摘する。

 実際、昨年末に発覚した東武鉄道の会員制情報サービスの情報流出事件では、会員約十二万八千人のうち、身に覚えのないアダルトサイトの利用請求書が届いたという問い合わせが、現在までに約五千七百件に上っている。

 間違って登録した名前などがそのまま使われていることなどから、同社の会員リストが悪用されたことが発覚したという。

■IT普及で誰でも可能

 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「かつてのコンピューター犯罪は、専門知識を必要とするものだったが、ネットが一般生活に浸透した結果、詐欺や名誉棄損などの古典的な犯罪が急増している。一般社会と全く同じで、『うまい話には乗らない』という初歩的な注意でかなりの被害を防ぐことができる」と指摘する。

 岡村氏も「五年ほど前までは、技術を持つインテリヤクザが携帯電話の『ワン切り』などを行っていたが、最近の犯罪は、ITに詳しくなくとも手を出せるものばかりだ」と指摘しながら警告する。

 「現実世界で、子どもたちを盛り場に行かせないように、ネットの世界でも、危険な場所に近寄ってはならないという教育がますます重要になっている」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040530/mng_____tokuho__000.shtml