悪のニュース記事

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2004年05月30日(日) 01時47分

5月30日付・編集手帳読売新聞

 刑法学者の土本武司さんが以前、米国の陪審制度には西部開拓途上で培われた歴史と伝統があると述べたことがある。民衆が自ら悪と闘い、自ら悪を裁くのは、西部劇でもおなじみの光景だ◆国民が司法に参加する裁判員制度が五年以内に始まることになったが、このような歴史も伝統もない日本で、いかに定着させていくか。本紙の世論調査では七割もの人が裁判員はやりたくないと答えている◆義務だからと渋々裁判所に出向くのではなく、開拓時代の人々のような高い意識が必要だ。捜査手法から刑罰まで、欧米とは司法システムが異なる。市民参加の部分だけを見習って、新たな障害が生じることはないのだろうか◆当たり前だが裁判員になる人たちは、製造業や商業、教育、医療、農業など、さまざまな仕事に就いている。裁判が重要であるのと同様に大切な役割だ。裁判員になる確率はそう高くないとはいえ、裁判の迅速化と負担の軽減も課題だ◆少子化が進んでいる。働き手を何日も裁判に取られれば、中小企業などでは困るところもあるだろう。新制度のスタートが近づくほどに、さらに想定していない難問が次々と出てくるかもしれない◆「木を見て森を見ず」ではないが、裁判制度は改革されたものの、それ以外の分野がおろそかにならないよう入念な準備が必要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040529ig15.htm