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2004年05月26日(水) 18時00分

ブログで広がる、新しい草の根政治運動WIRED

 ソーシャル・ネットワーキングやオンライン・コミュニティーを母体とした直接行動、それにブログ(ウェブログ)から生まれた、いわゆる「アリの革命」が、ネットという枠を超えて広がっている——。

 これが、4月末にカリフォルニア大学バークレー校大学院ジャーナリズム科で開催されたパネルディスカッション参加者たちが出した結論だった。オンライン・コミュニティー上の政治活動をテーマにしたこのディスカッションのパネラーたちによると、ウェブはとくに、政治に無関心な層に参加意志を持たせ、政治を草の根レベルに取り戻すよう導く役割を果たしているという。

 「あとで振り返れば、(ハワード・ディーン大統領候補の選挙運動が)変化の始まりだったことがわかるだろう」と、ソーシャル・ネットワーク・サービス『 http://www.tribe.net/tribe/servlet/template/pub%2CLogin.vm;jsessionid=537A931683750D6D4F731EA479C6E018.worker1 トライブ・ネット』を運営する米トライブ・ネットワークス社のマーク・ピンカス最高経営責任者(CEO)は述べている。

 ディーン候補がこの選挙戦で一般市民から1000万ドルを越える寄付を集めることができたのは、伝統的な選挙運動への異議表明という意味を持っていたからだと、民主党の活動家を支援する人気ウェブログ『 http://www.dailykos.com/ デイリー・コス』を主催するマーコス・ムーリツァス・ズニガ氏は説明する。一般にこれまでの選挙参謀や政党は、有権者を──少なくとも、自分たちの候補に投票するつもりのない有権者を——投票所から遠ざけようとするものだ。しかし最近の活動家たちは、ウェブ、とくに活動家向けのネットワークやブログを使ってこれに対抗し、より多くの人々に政治参加をさせようと取り組んでいると、ムーリツァス氏は説明する。

 「(伝統的な選挙運動では)自陣営がコントロールできない有権者を無力な状態に置いておく──そうやってできるだけ多くの人を選挙プロセスから遠ざけておこうとする。しかしわれわれは、選挙参加の領域を拡大しようと努力した」。ムーリツァス氏は、ディーン候補のキャンペーン責任者がデイリー・コスのファンだったことが縁で、ディーン候補のインターネット戦略顧問を務めた。

 ディーン候補の選挙運動に興味を持った人の大多数は、それまでは政治に無関心な層だった。ウェブは、このような人々が選挙にかかわるきっかけを作った。いったん気持ちをつかんでしまえば、組織化や選挙資金集めは容易になる。

 「このような人々は、目的を明らかにすれば寄付の呼びかけに応じてくれる。もう、まったく見知らぬ他人ではないという感覚があるからだ。このような協力者たちが、選挙人名簿への登録を呼びかけたり、友人や同僚の意識向上に働きかけたりする、非常に強力な活動家になった」

 ムーリツァス氏がデイリー・コスを立ち上げた2002年の春頃は、「進歩的リベラルの立場をとることが、非常に難しかった」という。しかし11月の中間選挙があと数週間に迫ったとき、サイトには1日8000人が訪れるようになっていた。現在、デイリー・コスへの訪問者は1日15万人に達し、さらに毎週5%から10%の割合で増えているという。

 「われわれはまったく無名だった。それなのに、真面目に話を聞いてくれる人がいた。そして、このような人たちは、何の資格や実績もなしに大きなコミュニティーを作れたのだから、きっとそのコミュニティーを動かして変化を成し遂げることもできるはずだという考えにいきついた」

 まもなくムーリツァス氏とパートナーは、ハワード・ディーン候補の選挙運動を指揮していたジョー・トリッピ氏から、顧問になってほしいという依頼を受けた。

 ムーリツァス氏は、ディーン候補の選挙運動が大きくなったのは、参加者たちが、人に付和雷同しているのではなく、自分が1つの大きな目的に向かって積極的に参加していると感じたためだと述べている。

 「ウェブログの読者は、もともと議論に参加したがる人々だ。指示されて動くのが好きなタイプではない」

 ウェブログとソーシャル・ネットワークは着実に成長を続けてきたが、政治活動関連のものが最もめざましい活躍をみせている。

 ウェブログ『 http://susanmernit.blogspot.com/ ナビゲーティング・ジ・インフォ・ジャングル』を運営するスーザン・マーニット氏は、バーチャル・コミュニティー成功の秘訣を、現実世界との何らかのつながりを持っていることだと考えている。サイバー世界の外部にある具体的な何か──スポーツでも政治でも──への情熱を共有する人々は、オンラインでも堅固なコミュニティーを作りあげるという。

 ムーリツァス氏は、選挙戦においても、インターネットだけに頼っていては当選は難しいだろうと考えている。

 「草の根の運動も、従来のメディアも必要だ」とムーリツァス氏。

 しかし、ディーン候補の選挙運動がインターネットのせいで失敗したというわけではない。ディーン候補がこの動きを生かしきれず、集めた資金を上手に使えなかっただけだとムーリツァス氏は言う。ディーン氏はインターネットを使ってもそこまでしか到達できない候補だった。それ以上多くの人々から支持を集めるような魅力がなかったため、目的を達成できなかった。

 ディーン候補の選挙キャンペーンをきっかけに生まれたウェブログの人気は衰えていない。しかし人気のオンライン案内広告サービス『 http://www.craigslist.org/ クレイグズリスト』を運営するクレイグ・ニューマーク氏によると、ウェブログとソーシャル・ネットワーキング・サイトにとっての課題は、集まった数多くの人々をインターネットという枠の外に連れ出す方法を見つけ出すことだという。

 トライブ・ネットのピンカスCEOは、自らの利益のために行動する多くの個人の力を結集できることが、インターネットの長所だと考えている。このような人々がまとまれば、政治的な行動をさらに拡大できる。

 トライブ・ネットなら、関心を共有する人々がグループを作り、政治的な行動を起こすことが可能だと、ピンカスCEOは話す。

 現在、トライブ・ネットで最も活動的なネットワーク・グループ——それぞれが『トライブ』と呼ばれる——は、4月半ばに誕生した「ブッシュ対ケリー」トライブだという。サンフランシスコ市長選の際、環境活動家のマット・ゴンザレス候補を推すために結成されたトライブにも勢いがあった。ゴンザレス候補は、「マットを支持する自転車愛好家の会」、「マットを支持するパンク愛好家の会」、「マットを支持する母親の会」など、25あまりのトライブから大きな支援を受け、最終的には僅差でギャビン・ニューソム候補に敗れたものの、決選投票にまで持ち込むことができた。

 ピンカスCEOは数年前、草の根の政治運動を支援する『 http://www.moveon.org/front/ ムーブオン』とほぼ同時期に、「イーパーティー」というベンチャー事業を始めたが、コンセプトを見誤ったために失敗した。議題や方向性を示すことができなかったことが失敗の原因だという。

 ピンカスCEOは、人々が集って好きなように利用できるプラットフォームを作りさえすれば十分だと考えていた。しかしムーブオンのオーガナイザー、ウェス・ボイド氏は、進歩的な意見を持つ人々のために議題を提示し、賛同する人は誰でも議論に参加するよう促した。

 「(ボイド氏が)正しくて、私が間違っていた」とピンカスCEOは語った。

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