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医師の約4割が加入する「日本医師会医師賠償責任保険制度」(医賠責)が03年末で、未払い金を含め139億円の累積赤字になっていることが25日分かった。医療過誤をめぐる訴訟の増加や1件あたりの支払金額の高騰が原因だ。医療訴訟では一般の訴訟に比べて、まだ患者の訴えが通りにくいのが現実だが、日本医師会には「訴訟が増えて保険料がさらに高騰すれば、米国のような医師の萎縮(いしゅく)診療につながりかねない」との主張もある。
同制度の加入者は約11万5000人で、医師向けの損害賠償責任保険としては日本最大。医療事故をめぐる判決や調停、和解、示談などに保険金を支払っている。
日医の内部資料によると、制度が発足した73年から03年末までに加入者から集めて損害保険会社に支払った保険料総額791億円に対し、損保から当事者に支払われた保険金は842億円で51億円の支払い超過。このほかに未払い保険金が88億円あるため、累積赤字は139億円となる。
最高裁によると、医療事故にかかわる訴訟は03年には987件で、10年間で2倍強になっている。約12%が産婦人科で、医師数に比べ訴訟の割合が高いという。医事訴訟の多くは、患者や遺族らが、医学の専門家である医師らを相手に起こす。このため、ミスを見抜く鑑定人を探すだけで時間がかかるなど、患者側に不利との指摘が強い。その一方で、訴訟に時間や費用がかかるため医師側が和解勧告に応じる傾向も強まり、支払い保険金額も増え続けている。
昨春、5万5000円だった年間保険料を開業医や病院長に限り7万円に値上げし、赤字幅は縮小したものの「このままでは2、3年で再度の保険料アップが避けられない」(日医幹部)という。
日医は、支払い上限の1億円に別枠で1億円を上乗せできる特約保険も02年から導入、産婦人科には別枠の保険制度の導入も検討するなど収支改善に必死だ。
米国では70年代以降、賠償額と保険料の高騰が原因で医師の廃業などが相次ぎ、社会問題化。各州による医療過誤の賠償金の上限設定や、医師が無過失の場合に救済金を支払う制度の導入などにつながった。日医の藤村伸常任理事は「日本も米国の状況に近づきつつある」と指摘する。(05/26 03:04)