2004年05月24日(月) 18時00分
ポルノとマスターベーション撲滅に立ち上がった若き聖職者たち(WIRED)
『リック』さん(仮名)は、ワシントン州に住み、ドーナツチェーンの『クリスピー・クリーム・ドーナツ』で働く20歳の若者。キリスト教を信じるリックさんには、深刻な悩みがある——マスターベーションをしてしまうことだ。
リックさんは最近、自慰行為は罪深い行為だとの考えを同じくする、やはりキリスト教徒の男性何人かと知り合い、40日間「不浄行為」をしないと誓い合った。聖書に
http://www.apocalipsis.org/jesustemptation.htm 書かれている、砂漠でサタンがキリストを快楽に引き込もうと誘惑し続けた日数と同じだ。リックさんと仲間たちは、電子メールやインスタント・メッセージを通じて、誓いを破らないよう励ましあっている。
「始めてまだ数日だが、自分の体がいかにそれに慣れ、中毒になっていたかを実感しつつある」——今回の挑戦を記録しているウェブログ『
http://www.xanga.com/home.aspx?user=free_to_be_pure フリー・トゥ・ビー・ピュア』に、リックさんはそう書き込んでいる。「我慢するのは大変だが、自分のためだけでなく、一緒にこの禁欲に挑戦している仲間たちのためにも、強くなろう、そしてこの中毒を打ち負かそうと僕は戦っている。みんな、がんばろう! 僕たちは清らかさを取り戻せる」
リックさんたちが挑戦を始めるきっかけになったのは、『
http://www.xxxchurch.com/ XXXチャーチ』というウェブサイトだ。このサイトは、ポルノと自慰という2大誘惑を克服できるよう人々を支援し、彼らを神に向かわせることを使命としている。
このオンライン活動は、世界のポルノ産業の中心地と言われる南カリフォルニア出身の
http://www.wired.com/news/images/0,2334,63502-12489,00.html 2人の若い牧師(写真)が立ち上げたもの。とりわけポルノが蔓延している媒体、インターネットを通じた肉欲の罪に対して、果敢に戦いを挑んでいる。とはいえ、非常に厳しい戦いだ。XXX(ポルノ)サイトが無数にあるのに対し、XXXチャーチはたった1つしかない。
「(われわれは)キリスト教会がポルノ問題に対して何もしていないのを見て、立ち上がって何か行動を起こそうと決めた」。クレイグ・グロス牧師(28歳)は、2002年にマイク・フォスター牧師(32歳)と2人でXXXチャーチを設立した動機についてこう話す。「キリスト教徒とそれ以外の人々双方に訴えかけるため、通常の教会活動の範疇に当てはまらないやり方をしたかった」
「最高のキリスト教ポルノサイト」を名乗る同サイトでは、ダウンロードして使える聖書研究素材や、祈りのためのオンラインフォーラム、登録したユーザーが訪れた好ましくないサイトを記録して、
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/culture/story/20030318207.html 指定した第三者にその事実を報告できる(日本語版記事)無料ソフトウェア『
http://www.x3watch.com/ X3ウォッチ』などを提供している。
実用的なアドバイスも多数ある。両牧師が自慰行為の代わりに勧めるのはこんなことだ。「平静を保ち、自らにこう言い聞かせなさい。『自慰よ、私はおまえの奴隷ではない! 私は自分の人生を取り戻す!』(あるいはこれに類する言葉を)。もし、これがうまく行かなかったら、ほかのやり方もある。たとえば、ガムを噛むとか、[ドラッグの禁断症状について歌った]ジョン・レノンの曲『冷たい七面鳥』を大声で歌う、あるいはチョコレートを食べるとか、自分にとっていちばん気の紛れること(ただし自慰以外)をすればいい」
マスターベーションを戒める教えは、
http://www.gnpcb.org/esv/search/?q=Matthew%205:27-30 マタイによる福音書5章27〜30節に基づくものだ。福音書は肉欲を罪とし、もし体の一部(たとえば右の手)が罪を犯させるのなら、切り取って捨ててしまいなさいと述べている。なぜなら、「体の一部を失っても、全身を地獄に投げ入れられるよりはまし」だから、と。
両牧師は最初、『セーブ・ザ・キトゥン』(子猫を救え)という電子メールキャンペーンを展開した。メールの内容は、『Photoshop』(フォトショップ)で作った、2匹の大口を開けた怪物が子猫を追いかける画像に、「あなたが自慰を1度するたび……神が子猫を1匹殺す」というメッセージを添えたもの。「子猫を殺す」という比喩が、自慰について人々が語りやすい状況を作ったとグロス牧師は話す。この電子メールは多くの人に広まったが、キャンペーンから派生したビデオ——子猫が部屋の端から端まで乱暴に放り投げられる映像——のために、不快感を持つ人も出た。
次の試みは、小人症の人を起用して、「ポルノは君の成長を止める」というキャッチコピーをつけたテレビCMだった。このCMは、MTVやその他の若者向けテレビ番組で流されたが、小人症患者の支援団体『
http://www.lpaonline.org/ 』(LPA)が不快感を表明したことから、放送中止となった。
XXXチャーチは先ごろ、2本目のCMを完成させたが、こちらも1本目に劣らず物議を醸している。これを監督したのは、『ナットジョブ・ナース』『ジ・アナル・ライフ』などを撮ったベテランのポルノ映画監督、ジェイムズ・ディジョージオ氏。ポルノ業界では『
http://www.simplyjimmyd.com/ ジミー・D』の名で知られる人物だ。XXXチャーチの両牧師とは、業界誌『アダルト・ビデオ・ニュース』(AVN)がラスベガスで開催している展示会『
http://show.adultentertainmentexpo.com/adult-expo/V40/index.cvn アダルト・エンターテインメント・エキスポ』の会場で知り合った。両牧師は毎年ここへブースを出し、聖書と「イエスはポルノスターを愛している」と書かれたステッカーを配っているという。
両牧師から、小人症の人を使ったCMが放送中止になった話を聞いたディジョージオ氏は、
http://www.xxxchurch.com/patrol/commercial.asp 新しいCMの監督を無償で引き受けると申し出た。そして完成したのが、人形を使ってセックスを模した場面と、子どもをポルノから遠ざけようという警告からなるCMだ。ディジョージオ氏はこの反ポルノCMを引き受けた動機を公にしておらず、ワイアードの取材依頼にも返答はなかった。
両牧師のこうした活動は、保守的なキリスト教徒の怒りを買っている。ポルノ関係者と親しくしているなど、およそ聖職者らしからぬやり方が非難を浴びているのだ。
XXXチャーチの
http://www.xxxchurch.com/gettoknow/hatemail.asp 反論メール欄には、別の反ポルノ団体『
http://www.settingcaptivesfree.com/ セッティング・キャプティブ・フリー』の創設者マイク・クリーブランド氏が送った次のような文面が掲載されている。「われわれが両牧師を支持しない主な理由は、彼らのやり方が聖書に即しておらず、聖職者としても実りある結果を生んでいないためだ」。ワイアードはクリーブランド氏に取材を試みたが、この抗議について詳しく語ることは拒否された。
一方で、両牧師の活動を賞賛する人々もいる。ケンタッキー州でセックス中毒のキリスト教徒向け治療センターを運営する団体、『
http://www.purelifeministries.org/ ピュア・ライフ・ミニストリー』のスティーブ・ギャラガー会長もその1人だ。XXXチャーチという名称を聞いたときには懐疑的だったが、両牧師の訪問を受けてその考えが変わったという。
「彼らが発する『ポルノより素晴らしいものがある、それはキリストだ』という単純明快なメッセージは、好悪はさておき鋭いものだし、ユーモアのセンスに富んでいる。サブカルチャーの世界にかけたこの橋を、人々がいつか渡ってくる——楽天地だと思っていた世界が実はそうではないと分かって、行き場を失った人々が」とギャラガー会長。
グロス牧師は、他人が自分たちの活動をどう思っているかなど、あまり気にしないと述べている。
「キリスト自身も物議を醸した人物なので、(われわれも)人に嫌われようがかまわない。ただ、悲しいのは、非難の多くがキリスト教徒から寄せられることだ。ちょうどキリストの時代と同じように。信仰に篤いとされていた人々が、きまってキリストを非難した」
批判を受けながらも、両牧師は講演で各地を回ったり、インターネットで流すリアリティー番組の準備をしたりと忙しく活動している。この番組は2人の「ポルノの世界における冒険」を記録するもので、実在のポルノ俳優や、ポルノ中毒を克服しつつある若者なども登場する予定だ。番組のタイトルは、『
http://www.missionarypositions.tv/ ミッショナリー・ポジション』(聖職者の立場/正常位)という。
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