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「年金受給者に対し、電話や文書で、個人情報の問い合わせをしたり、区や社会保険事務所の職員を装って訪問し、現金をだまし取るケースが昨年くらいから、増えている」。こう注意喚起するのは、東京社会保険事務局だ。
今月十九日、墨田区内に住む女性(64)が、自宅を訪ねてきた墨田社会保険事務所の職員を名乗る男に、実際には存在しない「社会福祉年金」がもらえると持ちかけられ、「手数料」名目で現金二万八百円をだまし取られる事件が起きた。
同局管内では、今年二月にも北区内の女性(85)が、区役所職員を装って訪ねてきた男に、「八十歳を超えると社会福祉老齢年金がもらえるが、手続きが必要」などと持ちかけられ、「手数料」名目で一万四千円をだまし取られたほか、昨年四月にも、足立区内で、「年金の未支給分がある。手続きが必要」などと持ちかけ、現金をだまし取られる事件が二件起きている。
「昨年四月以降、こうした詐欺が全国的にも増えてきた」と、社会保険庁の担当者が話す。同庁が昨年十月にまとめた被害実態によると、昨年六月から十月上旬までの間に、同庁職員などを装って、「国民年金の未納があるから」などと、電話で銀行口座に入金を要求したり、個別に訪問するなどのケースは北海道、千葉など十五道府県で九十件に上った。このうち岩手、福井などの七件では実害は約百四十四万円に上った。
「昨年度全体では、実害が出たものを含め、被害は千件以上になりそうだ」と、被害が拡大傾向にあると同庁担当者は話す。
では、増加の原因は何か。同庁担当者は「分からない」と首をひねる。
だが、手口には「年金の過払い」「社会福祉年金の制度がある」というケースが多いことから、弁護士の木村晋介氏は、「国民年金を受給するには、二十五年払わないといけないということを、多くの国民が知らないほど、制度についての理解が進んでいない。そして複雑だ。事件は制度の複雑さや国民の無理解を逆手に取っている」と指摘する。相次いだ国会議員の未納釈明会見で「うっかりミスだった」などとする発言に、「では自分は」と不安にもなる。
さらに、国民年金の保険料徴収業務が二〇〇二年度に、市町村から国(社会保険事務所)に移管され、未納者が四割近くに増え蔓延(まんえん)したことを詐欺急増の背景に挙げる声もある。
同庁は徴収率向上のため、「国民年金推進員」を二千五百人に増やし、未納者宅を訪問している。当然、未納者が増えれば推進員が個人宅を回るケースも増える。「年金に関して、それにかかわる人が、自宅を訪ねてきても、『おかしい』と思わない状況がある」(木村弁護士)
同庁は、「(徴収業務の変更が)背景にあるのかもしれないし、ないのかもしれない。基本的にはないと思う」。
木村弁護士はこうも指摘する。「悪質商法、詐欺の犯人はいつも何か新しい手口を考えてくる。少し前は架空のネット料金だが、今は年金が話題だ。この種の手口は予想できることで、一件でも被害があったら、(注意喚起の)おふれを出せば、被害は少なく、くい止めることができる。予防情報は十分だったのだろうか」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040522/mng_____tokuho__000.shtml